コメの輸入関税を一時撤廃、南部の洪水被害による供給不足で
(ブラジル)
サンパウロ発
2024年05月28日
ブラジル貿易審議会執行局(Camex)の貿易審議会運営執行委員会(Gecex)の臨時会議が5月20日に開催され、次の3種類のコメについて、メルコスール対外共通関税率表の例外品目リスト(LETEC、注1)に加え、輸入関税を一時的にゼロにする決定をした。
- 「種籾(たねもみ)」でない長粒種のもみ米(NCM 1006.10.92)輸入関税9%
- 精米されていない白米または玄米(NCM 1006.20.20)輸入関税9%
- 半精米または精米された米(NCM 1006.30.21)輸入関税10.8%
同措置は連邦官報に掲載された時点で発効し、2024年12月31日まで有効だ(注2)。開発商工サービス省貿易局(Secex)は状況を監視し、必要に応じて有効期間を再評価するとしている。
この決定は、4月末から続く南部リオグランデ・ド・スル州の洪水被害によりコメが供給不足に陥ることを避け、価格の安定を図るためとしている。同州はブラジル国内のコメ生産の約70%を占めている。パウロ・テイシェイラ農業開発・家族農業相は、この政策は国民が公正な価格〔1キログラム4レアル(約120円、1レアル=約30円)〕でコメを入手できるようにするためのもので、生活費の削減を目指していると強調した。
メルコスール域外の大規模生産国からの供給拡大が視野
これまでブラジルのコメ輸入は主にメルコスール加盟国(パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン)から行われており、これらの国からの輸入は既にLETECに含まれているため、関税がかかっていなかった。しかし、今回の措置により、タイなどの大規模生産国からの輸入も促進される見込みだ。
ブラジル地理統計院(IBGE)の予測によると、2024年のブラジルの米生産は前年比2.5%増の1,050万トンに達すると見込まれている。収穫面積も4.5%増加するが、単位面積あたりの収量は1.9%減少する見通しだ。リオグランデ・ド・スル州の洪水にもかかわらず、全体的な生産量は増加する見込みだ。IBGEは、この生産量が国内市場の需要を満たすのに十分と述べている。
政府の今回の措置は国内の供給不足と価格の安定を目的としており、洪水被害を受けたリオグランデ・ド・スル州の状況に対応し、他の大規模生産国からの輸入を促進することで、国内市場の安定化を図る方針だ。この政策により、国民が公正な価格でコメを購入できる環境が整うことが期待されている。
(注1)メルコスール正式加盟国は対外共通関税を採用しているが、加盟国は国ごとに例外品目の設定が認められている。
(注2)5月23日に官報記載済み。
(中山貴弘)
(ブラジル)
ビジネス短信 22fb95230f7495d6