米ジョージア州、中国など特定の外国人・事業体による農地などの所有を禁止
(米国、中国、キューバ、イラン、北朝鮮、ロシア)
アトランタ発
2024年05月09日
米国ジョージア州のブライアン・ケンプ知事(共和党)は4月30日、中国など特定の外国人や事業体による特定の土地の所有権の取得を禁止するために、同州公示法典(OCGA)を改正する法案(SB 420)に署名した。同法案は7月1日から施行される。
OCGAは同州の全ての法律の大要を示したもので、州議会で制定された州法の索引役だ。OCGAの1-2-11条「一般的な外国人の権利、不動産の購入、保有、譲渡」では、米国および同州と平和状態にある政府の人民である外国人は、同州で不動産を購入、所有し、譲渡する権利を有すると規定している。今回成立した法案では、新たに「非居住外国人」を定義し、これがOCGAの1-2-11条で定める権利の例外となった。非居住外国人は、米連邦規則集(CFR)の第15編7.4条で敵対者として定められている中国、キューバ、イラン、北朝鮮、ロシアの企業や事業体(注1)、これらの国の国民(注2)とした。非居住外国人は直接、間接を問わず、農地(注3)または軍事基地、軍事施設、軍事空港の半径10マイル(約16キロメートル)以内の土地の所有権を取得することが禁止された。
法案の署名式で、ケンプ知事は同法律の目的を国家安全保障のためと主張し、「食糧供給のように、われわれの生存に不可欠なものを外国の敵対勢力に支配させるわけにはいかない」と述べた(ABCニュース5月1日)。一方で、州議会での法案審議中には、同法案は人種差別につながるとの批判が民主党議員を中心になされ、下院のサム・パーク議員(民主党)は、不動産業者が中国人と他のアジア系民族、あるいは中国の代理人と一般の中国系住民を区別できず、アジア系移民との取り引きを嫌がるようになるとの懸念を表明していた(NBCニュース3月22日)。
なお、中国企業による米国農地の買収に関する懸念は連邦議会や他州でも示されている。連邦議会下院のジョン・ムーレナー議員(共和党、ミシガン州)は4月29日、「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委)」の委員長就任に当たって発表した声明で、中国共産党による米国の価値観や主権を損なおうとする試みの具体例の1つとして、中国企業による米国農地の買収を挙げた()。また、ジョージア州で今回制定された法律と同様の法律がフロリダ州、アラバマ州、ルイジアナ州、アーカンソー州でも2023年に制定されている(USニュース3月21日)。
(注1)米国内に所在せず、CFR第15編7.4条で敵対者として定められている国などに本拠地を置く法人や事業体など。または、米国内に所在するが、敵対者の国に所在する法人などがその所有権の25%以上を保有する法人や事業体など。
(注2)CFR第15編7.4条で敵対者として定められている国などの国民のうち、米国市民や合法的居住者でないもの。かつ、土地の所有権を取得する直前の12カ月のうち、6カ月以上米国から物理的に不在にしている、もしくは、所有権を取得する直前の12カ月のうち、2カ月以上ジョージア州から物理的に不在にしているもの。
(注3)農作物、木材、家畜または畜産物、家禽(かきん)または家禽製品、牛乳または酪農製品、果実またはその他の園芸製品の生産に使用可能な土地。ただし、農業用以外の用途、かつ農業用に不適合な用途で、地方自治体によって区画された土地は含まれない。
(檀野浩規)
(米国、中国、キューバ、イラン、北朝鮮、ロシア)
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