欧州食品小売市場、2024年下半期に販売量回復の見通し
(EU、英国)
ブリュッセル発
2024年04月16日
欧州の小売・卸売業界団体ユーロ・コマースは4月10日、米国マッキンゼー・アンド・カンパニーと共同で2024年欧州食品小売市場に関する報告書を発表した(プレスリリース)。4回目となる今回は、食品小売企業約30社の最高経営責任者(CEO)と欧州11カ国(注)の消費者約1万2,000人を対象としたアンケート調査に基づく。
インフレにより2023年の食品価格は前年比12.8%上昇し、食品小売市場の売上高は8.6%増となった一方、販売量は2.0%減だった。2024年の物価上昇率は約2%で安定すると予想され、実質賃金の上昇も見込まれる。また、高所得者層では支出額が増加しはじめていることから、下半期(7~12月)の販売量回復を予測した。CEOへの調査では、24%が「市況は改善」、40%が「現状維持」と回答し、前年より明るい見通しとなった。
CEOに対し2024年の課題を問う質問(複数回答可)では、約7割が「利益率の改善」を上位3項目に入る課題の1つに挙げた。賃料や人件費の上昇が主な理由で、改善には納入事業者との価格交渉が厳しさを増し、共同調達の動きが進むと予測した。また、デジタルスキルなどを有する人材に限らず、人手不足が深刻さを増している。離職率も高く、従業員の多様な働き方やキャリア形成の実現が重要になると指摘した。
また、欧州主要小売り10社のうち7社が、2025年までのスコープ1[事業者自らによる温室効果ガス(GHG)の直接排出]とスコープ2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)のGHG削減目標を定めているが、達成しているのは2社にとどまった。スコープ3[スコープ1、2以外の間接排出(事業活動に関連する他社の排出)]については進捗があったとした企業はなかった。スコープ3の正確な排出量測定は困難だが、正確な測定に努める先駆的な企業もある。実際の排出量を把握し、排出量がより少ない納入事業者への変更や、取引事業者と具体的な削減目標の設定といった取り組みもある。
このほか、2024年の消費トレンドの1つとして、オフィスへの出勤や多忙なライフスタイルの増加を背景とした、中食市場の成長が挙げられた。同市場の今後5年間の成長率は、食品小売市場(約3%)を上回る約8%と予測され、小売企業においても温かい商品の提供や飲食スペースの設置などで、集客や増益につなげる動きがみられるという。
(注)EU加盟10カ国(ベルギー、チェコ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン)と英国の合計11カ国。
(滝澤祥子)
(EU、英国)
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