億航智能、空飛ぶクルマの生産許可証を取得

(中国)

広州発

2024年04月16日

ドローンおよび電動垂直離着陸機(eVTOL)メーカーで空飛ぶクルマを手掛ける億航智能控股(広州)(イーハン、本社:広州市)は4月7日、中国民用航空局(CAAC)か​​ら空飛ぶクルマ「EH216-S」の生産許可証を取得したと発表した。同社によると、生産許可証の取得はeVTOL業界としては世界初となる。「EH216-S」は2023年に型式証明(注1)と標準耐空証明(注2)をそれぞれ取得しており、今回の生産許可証の取得は、「EH216-S」の量産化への大きな一歩であり、市場に参入する資格を備えているとした。

イーハンによると、生産許可証の取得は、同社がCAACの耐空規制の要件を満した量産品質管理システムを構築していることを踏まえ量産が承認されたこと、同社製品の品質が保証されたことを示している。また、イーハンは「EH216-S」の量産品質管理システムは、原材料、サプライヤー管理、生産枠組み、品質管理、出荷検査、アフターサービスとメンテナンスなどをカバーしており、同製品に使用される全部品・システムの生産過程が追跡可能で安全に管理され、機体設計や安全要求が耐空規制に準拠していることを保証するとしている。

ただし、型式証明によって、「EH216-S」の飛行可能範囲は制限されているため、本当の商業化の実現にはまだ距離がある。「EH216-S」の型式証明データシート(TCDS)によると、「EH216-S」は、規定された空域内、かつ人口が少ない地域の上空においてのみ飛行できるなど飛行可能範囲が制限され、水上での飛行も禁止されている。この制限は「EH216-S」が都市上空や人口密集地域で飛行できないことを意味している。

商業化の実現はまだ道半ばだが、型式証明の取得以降、「EH216-S」を含む「EH216」シリーズ(注3)の納品台数は大幅に増加した。イーハンが2024年3月15日に発表した2023年第4四半期および年次報告書によると、2023年第4四半期と2023年通年の納品台数はそれぞれ23台(前年同期比3.8倍)、52台(前年比2.5倍)だった。また、2024年第1四半期の総収入について、前年同期比2.6倍の約5,800万元(約12億1,800万円、1元=約21円)と予想している。

イーハンの創始者で胡華智董事長兼最高経営責任者(CEO)によると、「生産許可証の取得は量産段階に入ることと、商業化運営の面でも大きな進展であることを意味する」と述べ、2024年に広東省の広州市、深セン市、珠海市、安徽省の合肥市などで初期の低空経済(注4)「モデル都市」を構築する計画を示した(「界面新聞」2024年4月8日)。

(注1)型式証明は、民間機が耐空規制と環境保護要件に適合していることを証明する。航空機のモデルごとに与えられる証明で、取得するには型式設計、使用制限、耐空性、環境保護要件などに対する検査が行われる。

(注2)標準耐空証明は、航空機を飛行させるために必要な証明であり、1機ごとに検査を行う。取得するには、型式証明を含む航空機の各種資格証明書、技術、および耐空性に関する文書、ならびに納入時に当該航空機の技術文書内に規定された物理的特性と機能などの検査が行われる。

(注3)「EH216」シリーズには、今回、生産許可証を取得した旅客輸送用モデル「EH216-S」のほか、火災消火用モデル「EH216-F」、貨物輸送用モデル「EH216-L」が含まれる。

(注4)空飛ぶクルマやドローンをはじめとする民用航空機を中心に、乗客・貨物輸送を含めた低空飛行活動によって、関連分野の発展をもたらす経済形態を指す。

(梁梓園)

(中国)

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