ダイソー、ブラジル躍進の秘訣、大野現法社長に聞く
(ブラジル)
サンパウロ発
2024年04月12日
日用雑貨・食品などを販売するダイソーのブラジル現地法人の大野恵介社長に3月25日、同国での状況や事業展開の秘訣(ひけつ)について話を聞いた。大野恵介氏が着任したのは2012年の1号店。ダイソーは2023年末時点で148店舗をブラジルで展開している。同社は同国でも均一に近い価格(注)で、日本と同じ商品を中心に販売している。販売価格には、輸送費や現地での税金などが上乗せされるため、日本の3倍程度となるが、商品の売れ行きは好調だという。その背景には、ブラジル国内で販売される同様の製品よりも安く、品質が良いことに加え、低価格で安心感があることや、アイデアあふれる商品や丁寧な接客などの体験も、顧客獲得に大きく貢献しているとしている。ブラジルでは物価や人件費の上昇に応じて頻繫に値上げが行われるのが一般的で、企業側のコスト削減努力が見えにくい中、ダイソーの「安くて、よいものを提供する」取り組みは、消費者の圧倒的な支持につながっているようだ。以下、ダイソー現地法人の大野社長のコメントを紹介する。
「ブラジルでのダイソーのビジネスモデル導入はまさにチャレンジだった。『ブラジルコスト』と呼ばれる複雑で重い税務・労務の負担や、高額かつ課題の多い物流など、この国特有の課題を1つ1つ克服しながら、現在のかたちにたどり着いた」
「事業展開に当たって特に重視していることの1つは『顧客との関係づくり』だ。現在、ブラジル国内のダイソー店舗は、単独直営店とスーパーなどの店舗の一区画を利用した販売形式(インストア)などとなっているが、特に直営店では、豊富な品ぞろえや丁寧な接客などを通じた『楽しい体験』を提供し、顧客との絆づくり重視している。また、SNSを通じた顧客とのコミュニケーションも重視している。ダイソー・ブラジルのSNSのフォロワー数は、インスタグラムが78万人、フェイスブックが33万人など、延べ100万人を超えるフォロワーを抱えている。SNSでのハイパーブラックジャック発信に当たっては、厳選したインフルエンサーも活用し、顧客との絆を構築するとともに、新たな顧客の獲得にもつながっている」
「近年は、こうしたダイソーのコンテンツや顧客を取り込むことで、集客や売り上げを伸ばしたいスーパーやショッピングセンターからの出店の引き合いも多い。実際に、サンパウロ市内の大手スーパーやショッピングセンターでは、ダイソーの店舗を頻繫に見ることができる。大手スーパーでの販売が決まれば、一気にダイソーの商品を扱う店舗数が増え、また、ショッピングセンターでの出店が決まれば、富裕層市場の開拓にもつながる。2023年末には、サンパウロから遠く離れたアマゾン河口地域の中核都市ベレンでも新店舗をオープン。価格は輸送コストなどの関係でサンパウロより高くなっているにもかかわらず、好調な売り上げを記録している。現在、サンパウロを中心とした店舗展開となっているが、地方都市でのニーズが高いこともうかがえる。日本のコンテンツで、ブラジルの消費市場に挑むことで、さらに躍進をしていきたい」
(注)ブラジルの税率は商品により大きく変わるため、商品群によって幾つかの価格帯が存在する。
(井上徹哉)
(ブラジル)
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