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(フランス)

パリ発

2024年04月30日

フランス政府は有給休暇の取得権利の適用を拡大し、病気休暇期間中の従業員に有給休暇の権利を付与する。労働法を改正し、EU法に適合させるためだ。4月23日付の「経済、金融、環境移行、刑法、社会法、農業の分野におけるEU法への適応のための諸規定に関する法律外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます第37条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより労働法を改正、4月24日から施行した。

病気休暇中に雇用主から付与される有給休暇は年間4週間とし、15カ月を上限に、持ち越して有給休暇を取得することが可能となる。従来、労災や職業病による病気休暇が1年以内の場合は、実働期間と見なされ、5週間の有給休暇を付与されていたが、病気休暇が1年超の場合も、同措置を継続する。また、雇用主は従業員の職場復帰後1カ月以内に、病気休暇期間中の有給休暇の取得日数とその消化期限を給与明細書などにより従業員に通知する義務を負う。

その上で、2009年12月1日以降の有給休暇の遡及(そきゅう)請求を認める。雇用契約が継続中の現従業員は、施行日から2年以内を期限として同請求が可能。雇用契約が既に解消し、企業に在籍していない元従業員には賃金請求権の時効期間3年が適用され、雇用契約が3年以上前に解消している従業員は対象外となる。

EUとフランスの間では、病気休暇中の有給休暇の取り扱いの規定が異なっていた。欧州司法裁判所の2009年や2012年の判例では、「EU指令は病気休暇中の労働者も有給休暇の権利取得の対象とする」と判断したが、フランスの労働法では「就労または労災、職業病による1年以内の病気休暇の場合のみ、有給休暇の権利がある」と規定していた。

2023年9月13日にはフランスの最高裁判所の破棄院外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが、国内法の労働法がEU法に適合していないとして、労働法を退ける判決を出したことで、政府は労働法の改正を余儀なくされたが、憲法評議会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは2月8日、「フランスの労働法は合憲」と判断し、混沌(こんとん)とした状況となっていた。

破棄院の決定は直ちに適用され、無期限で遡及請求が可能となるため、日本の経団連に相当するフランス企業運動(MEDEF)は企業への過大な負担増を危惧していた。政府は病気休暇中の有給休暇の日数を労働法が規定する年間5週間ではなく、EU指令の4週間とするなど、企業の負担を抑える内容で労働法を改正した。

政府の法律諮問機関の国務院外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが3月14日、法案の「労災、職業病による病気休暇は5週間だが、その他の病気は4週間の有給休暇とすることや、上限3年の遡及請求権は合法」と承認したことを受け、MEDEFは満足の意を表明。他方、労働組合のフランス民主主義労働総同盟(CFDT)、労働総同盟(CGT)、労働者の力(FO)、管理職総同盟(CFE-CGC)は連名で3月18日、「労災や病気により雇用契約の履行が中断されている期間は、原因が何であれ(5週間の)有給休暇の権利を付与する」と法案を修正するよう、国民議会に求めるコミュニケPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表していた。

(奥山直子)

(フランス)

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