3月の米ISM製造業指数、18カ月ぶりの50超え、改善の見方広がる
(米国)
ニューヨーク発
2024年04月02日
米国のサプライマネジメント協会(ISM)は4月1日、3月の製造業景況感指数を発表した。製造業景況感指数は50.3と、前月(47.8)より2.5ポイント上昇し、2022年9月以来18カ月ぶりに基準値の50を上回った。ブルームバーグによる市場予想は48.5で、予想を大きく上回る結果となった。ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は今回の結果について「需要は回復の初期段階にあり、状況改善の兆しは明らか」として、製造業が回復過程にあるとの見方を示している。
項目別に見ると、生産(54.6)、新規受注(51.4)が50を上回り、3月の押し上げに寄与した。
新規受注では、6大セクター(注)のうち、前月に続いて化学、金属加工、コンピュータ・電子製品の3セクターが増加したほか、食品・飲料も増加に転じた。対象としている18セクターのうち、減少を報告したのは家具、輸送機器の2セクターのみで、3月は幅広い業種で受注の拡大がみられた。
生産は、2022年6月以来の高い数値で、6大セクターのうち、前月に新規受注の拡大を報告していた4セクター(化学、金属加工、輸送機器、コンピュータ・電子製品)に加え、食品・飲料・たばこもプラスに転じ、計5セクターが生産増加を報告した。対象としている18セクターのうち減少を報告したのは、家具、機械の2セクターのみで、こちらも幅広い業種での拡大が見られた。
在庫については、48.2(前月45.3)と、前月よりも在庫の積み増しを行った企業が増加しているが、フィオレ氏は「納期の改善、収益予測の精度の向上、顧客サービスの向上を目的として、在庫投資に意欲を示し続けている」とコメントしており、前月に続いて今後の生産にプラスとなる余地があると見込んでいるもようだ。
雇用については、47.4で、前月(45.9)と比較すると減少幅は縮小しているものの、なお基準値を下回っており、多くの企業がレイオフや人員削減、採用抑制を続けているとしている。また、対象の18セクターのうち、雇用の増加を報告したのは7セクター(前月4セクター)、減少を報告したのは8セクター(前月10セクター)と拮抗(きっこう)しているほか、前月に引き続き増加を報告したのは輸送機器と一次金属の2セクターのみとなっており、業種によってまちまちの状況が続いている。各業界からは、おおむね肯定的なコメントが挙がっている。
- 化学:需要は依然として旺盛で、受注のパイプラインは堅調。
- 金属加工:ビジネスは依然として好調で、予想を上回っている。
- コンピュータ・電子製品:需要は依然として軟調だが、受注はすぐそこまで来ているという楽観的な見方が強く、第2四半期(4~6月)は堅調になると期待。
- 一次金属:引き続き軟調な状況が続くが、航空宇宙産業や防衛産業は拡大を続けており、需要が供給を上回っていることもあり、第2四半期後半には注文が増加するとの楽観的な見方がある。
- 石油・石炭:大統領選が長期契約に影響を及ぼし始めている。
今回のISM製造業景況感指数の結果などを受けて、アトランタ連銀が発表しているGDPナウは、2024年第1四半期(1~3月)の成長率予測を発表前の2.3%から2.8%へ大きく上方修正した。
(注)商務省の発表している2022年第4四半期(10~12月)から2023年第3四半期(7~9月)までのGDPの数値に基づき、産出額の大きい6セクターの化学、輸送機器、食品・飲料、コンピュータ・電子製品、一般機械、金属加工を指す。
(加藤翔一)
(米国)
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