米ボルティモアの港湾事故、バイデン大統領が現場視察、復旧の進捗発表
(米国)
ニューヨーク発
2024年04月09日
米国のジョー・バイデン大統領は4月5日、メリーランド州ボルティモア市を訪問し、3月26日未明に発生した事故()現場の視察などを行った。また同日に、ホワイトハウスは本件に対する復旧などの取り組みの進捗に関するファクトシートを発表した。ファクトシートで言及された主な内容は次のとおり。
(1)残骸の撤去と港の再開に向けた作業
- 統一司令部を立ち上げ、沿岸警備隊、米国陸軍工兵隊、メリーランド州などが協力して対応できる体制を構築。
- 水路内から残骸の撤去を行うため、ダイバーによる初期調査を行い、この調査を基に水路の開通と港への通行を可能にするための計画を立案中。
- 残骸を取り除くためのクレーン船を配備し、作業用の2つの小さな水路の開削に成功。
- 4月4日に再開に向けた暫定的な見通しを発表。4月末までにコンテナ船や自動車・農業機械運搬船のための限定的なアクセス水路を開削し、5月末までに恒久的な水路を確保する予定。
(2)橋の再建に必要なリソース提供
- 残骸の撤去、必要不可欠な交通手段の復旧、橋の設計・再建に関連する初期費用を賄うべく、連邦運輸省から6,000万ドルの緊急資金を提供。
- 議会に対し、橋の再建費用の連邦政府全額負担へのコミットメントを要請。
- 責任者の責任追及とともに、損害賠償や保険金徴収など工事費用を回収するための手段を追求。
(3)経済的影響の軽減
- サプライチェーンの混乱を軽減するべく、関係者と協力してボルティモア港で唯一稼働しているポイントでの自動車や農業機械の取扱量の増強に向けた取り組みを実施。ニューヨーク港・ニュージャージー港など東海岸のほかの港湾や鉄道会社と連携することで迂回輸送を可能とする取り組みを実施。
- 主要な雇用主による港湾施設で働く労働者の雇用維持へのコミットメントや、労働者への一時金支払いの実施、政権による解雇や収入減リスクの監視、自動車輸入企業(注)によるボルティモア港湾の利用再開へのコミットメントなどを通じて港湾労働者を支援。
- 今回の事故の影響を受けた中小企業への災害低利融資の提供などの企業向け支援や、離職者への職業訓練・給付金受給サポートなどを通じて、ボルティモアの人々と企業に寄り添った支援を実施。
また、本事故に関しては、国家経済会議(NEC)が、自動車、エネルギー、化学、工業セクターの関係者からサプライチェーンへの影響などについてヒアリングを行っている。現時点ではいずれのセクターもサプライチェーンへの影響は限定的とのことだが、自動車業界からは、東海岸の港湾のキャパシティーを監視することや、トラック輸送能力を増強すること、できるだけ早くボルティモア港の操業能力を完全に回復させることなど、アルミニウム業界からは、一時的な混乱が発生している間、政権による継続的な支援が必要であることなど、政権側に対して要望がなされている。NECは今後数週間にわたり、本事故により経済的な影響を受けている関係者との対話を続けていく方針という。
(注)この中には、日系自動車メーカーのマツダ、スバル、三菱自動車が含まれている。
(加藤翔一)
(米国)
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