米スタートアップのアトランティック・フィッシュ、ブラックシーバスの培養肉を世界で初めて開発

(米国)

アトランタ発

2024年04月15日

米国ノースカロライナ州のスタートアップのアトランティック・フィッシュは4月9日、ノースカロライナ・フード・イノベーション・ラボ(NCFIL)と連携し、ブラックシーバスの培養肉の試作品を世界で初めて開発したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同社は、2020年に同州ローリー(注1)で創業し、主に、オヒョウや養殖が難しい高級天然魚種に焦点を当て、培養魚肉の研究・開発に取り組んでおり、懸濁(けんだく)液中で増殖可能な高性能魚類細胞株を作る独自技術を開発している。特に、ブラックシーバス含め、トロール漁など二酸化炭素(CO2)排出量の多い方法によって漁獲される魚種の培養肉開発に力点を置いている。同社のダグ・グラント最高経営責任者(CEO)によると、持続可能な農業の取り組みは代替食肉に集中しており、培養魚肉開発の成長余地は大きいとのことだ(ノースカロライナ・バイオテクノロジー・センター 2023年12月11日)。今後は、ブラックシーバスの培養肉用の専用培地を開発して、培養肉製造のコストを下げ、レストラン向けの試食イベント開催を目指す。

同州シャーロット近郊のカナポリスのノースカロライナ・リサーチ・キャンパス(注2)内にあるNCFILは、ノースカロライナ州立大学が運営する食品分野の先端研究開発施設だ。同施設は2019年に設立され、米国で唯一、cGMP基準(注3)を満たした植物由来食品開発のための設備を備えている。敷地面積は1万6,000平方フィート(約1,486平方メートル)で、最新の加工設備、食品科学分野の専門家の知見や広範なパートナーネットワークを提供する。NCFILは、研究開発のサポート、工場でのパイロット生産、安全性や加工の教育、食品スタートアップへの教育、食品産業のコンサルティングなどを行っており、既存の食品関連企業やスタートアップなどを幅広くサポートしている。

(注1)ローリー近郊のリサーチ・トライアングル・リージョンは、全米屈指のバイオクラスターとして、ライフサイエンス関連企業を中心に集積が進んでいる(ポスト・シリコンバレーを探る-米国・エコシステム現地取材)。

(注2)産学官連携の巨大バイオテクノロジー研究施設として2009年に設立。フィトケミカル、運動生理学、ポストハーベスト生理学、集団ベースの遺伝学的研究、精密栄養学などを重点分野に、より安全で栄養価の高い作物、より健康的な食品、精密栄養学の研究開発に取り組んでいる。

(注3)cGMPとは、米国食品医薬品局(FDA)が施行する現行適正製造基準規制を指し、製造工程と施設の適切な設計、監視、管理を保証するシステムが規定されている。

(横山華子)

(米国)

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