連邦政府と西オーストラリア州、蓄電池実証事業への支援発表
(オーストラリア)
シドニー発
2024年03月29日
オーストラリア連邦政府のクリス・ボーウェン気候変動・エネルギー相は3月25日、西オーストラリア州で行われる2件の蓄電池の実証事業を支援するため、再生可能エネルギー庁(ARENA)が管轄する「地域マイクログリッドプログラム(Regional Microgrids Program)」を通じて、それぞれ2億8,500万オーストラリア・ドル(約282億1,500万円、豪ドル、1豪ドル=約99円)の支援実施を発表した。西オーストラリア州政府も資金支援を行う。
実証事業は、西オーストラリア州政府が所有する電力会社ホライズンパワーが実施する。マイクログリッド(地域単位で構築する小規模な電力供給システム)を導入している同州内の遠隔地域に、長寿命型の蓄電技術を使った実証事業で、ARENAによると、1つは州沿岸部の町カーナーボーンにオーストラリア電池会社レッドフロー(RedFlow)が供給する亜鉛臭素レドックスフロー電池〔100キロワット(kW)〕、もう1つが州北部の町ヌラギンにドイツ化学大手BASFが供給するナトリウム硫黄電池(250kW)をそれぞれ導入する。ホライズンパワーはこれまで、リチウムイオン電池を用いて電力の安定化を図ってきたが、今回の実証事業で長寿命型の電池を併用した新しい電力貯蔵システムを検証する。各電池の設置は2025年初頭を目指している。
ARENAは、2つの蓄電池のメリットとして、長期間にわたる高温環境下でも劣化の少なく電力を安定的に供給することができるとしている。特に遠隔地域のマイクログリッドには重要で、リチウムイオン電池と比べて利点が大きいと説明している。
レッドフローは、ブリスベンに本社を持つ電池製造会社で、同社の電池は通信や農業、電力グリッド、住宅などの分野で導入されている。2023年9月には同社の電力貯蔵システムは米国電力会社アメレスコとともに、米国防総省防衛イノベーションユニットのマイクログリッドプロジェクトに採用されることが決定した。また、BASFは2019年に産業用セラミック大手の日本ガイシと、日本ガイシの製品NAS電池の販売提携契約を締結後、次世代ナトリウム硫黄電池の開発に関する共同研究契約を締結している。
西オーストラリア州は日本の約7倍の広大な面積(約253万キロ平方メートル)を有し、リチウムやコバルトなど世界有数の鉱物資源の生産地だ。州政府は電池産業と重要鉱物のサプライチェーンの拠点となるべく、投資を呼び込んでいる(注)。
(注)西オーストラリア州は日本語でも関連資料をウェブサイトで提供している。
(青島春枝)
(オーストラリア)
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