2月の米地区連銀報告、全体概況は引き上げも、消費者の購買余力減少の影響の広がりを示唆

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月07日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月6日、地区連銀経済報告(ベージュブック、注1)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。期間は1月9日から2月26日までのデータに基づくもの。

全体概況では、経済活動は「1月初旬以降、全体としてわずかに増加した」とした。前回報告書では、ほとんどどの地域においてほとんど変化がない、もしくは全くなかったと評価しており、若干の引き上げとなった。全12地区のうち、8地区では経済活動がわずかから控え目に増加、3地区(ニューヨーク連銀、リッチモンド連銀、カンザスシティー連銀)では変化なし、1地区(フィラデルフィア連銀)ではわずかに鈍化した。

分野別にみると、消費に関しては、「ここ数週間、特に小売りに対する消費支出が少しずつ減少した」とし、いくつかの地区(ボストン連銀、ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀、クリーブランド連銀、アトランタ連銀、ミネアポリス連銀、カンザスシティー連銀、サンフランシスコ連銀)からは消費者のトレードダウン(注2)志向の継続や、裁量的支出の抑制など、消費者の価格に対する感応性が高まった、と報告された。レジャー関連では、航空旅行は全体的に好調だったが、レストラン・ホテルなどの分野では価格高騰や異常気象により需要が低迷した。

物価については、「依然として物価上昇圧力が続いているが、いくつかの地区(フィラデルフィア連銀、シカゴ連銀、サンフランシスコ連銀)ではインフレがある程度緩和された」とした。分野別では、輸送費および雇用主が提供する健康保険料を含む保険分野での価格上昇が報告される一方、鉄鋼・セメント・紙・燃料など製造業や建設業の資材については価格が下落した、と報告した。同時に、顧客が価格変動に敏感になっているため、コストを転嫁できずにいる、との指摘がいくつかの地区(リッチモンド連銀、アトランタ連銀、セントルイス連銀、カンザスシティー連銀、サンフランシスコ連銀)からあった。消費者の購買余力減退の影響が、徐々に企業部門にも拡がりつつあることが示唆されている。

労働市場に関しては、(1)ほとんどの地区ではわずかから控え目なペースで雇用が増加した、(2)定着率が改善した、(3)企業は全体的に空いているポジションを埋めることが容易になった、(4)賃金は増加したが、いくつかの地区(フィラデルフィア連銀、クリーブランド連銀、アトランタ連銀、ミネアポリス連銀)では上昇ペースが鈍化しているとして、全体としては引き続き労働市場の緩和が続いていることが示唆された。

製造業については、「活動状況はほとんど変わらず、供給のボトルネックはさらに正常化した」述べた。また、紅海情勢の悪化やパナマ運河の渇水による物流への影響については、一般的には目立った影響を与えなかったものの、一部では国際輸送コストの上昇圧力があることが報告された。

不動産市場に関しては、1月に住宅ローン金利がある程度緩和したことから(ブラック ジャック やり方)、住宅用不動産需要が高まったが、限られた在庫が住宅販売を妨げていると指摘した。商業用不動産については、データセンターや産業・製造業用のスペース、大型インフラプロジェクトに対する需要があるものの、オフィス需要は低調だったとした。

銀行セクターに関する記述では、「ローンの延滞率の増加の報告がいくらかあったが、信用の質はおおむね健全だった」と述べるとともに、「融資需要は安定的から低下の間だった」とした。

(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立って年8回公表しており、銀行からの報告やビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。

(注2)より安価な商品を購入しようとする消費動向。

(加藤翔一)

(米国)

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