政府がエネルギー政策の新たな方向性提案、原子力新設可能性にも言及

(スウェーデン)

ロンドン発

2024年03月28日

スウェーデン政府は3月19日、新たなエネルギー政策案を議会へ提出したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。スウェーデンは2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を2005年比で59%減、2045年までにネットゼロを達成することを目標に掲げている。

具体的な提案内容は次のとおり。

  • 電力需要の定期レビュー:電化の促進とグリーン移行を可能にするために、2045年までに少なくとも300テラワット時(TWh)の電力需要を満たせる電力システム計画が必要と政府は想定。国内各地域の電力需要を明確にするとともに、2030年以降、2045年まで5年ごとに定期レビューを実施する。
  • 市場:電力システム上の不当な障害を取り除き、競争的な価格を促進する効率的な市場の条件を整える。
  • 安定供給:スウェーデンの国有送電系統運用会社スベンスカ・クラフトネートが供給安定性の定期的なモニタリングと、目標達成に向けた必要な措置の実施、提案についての責任を負う。
  • 電化:脱炭素に向けて、電化が政策の中心となる。従って、今後のエネルギー政策では、電化の方向性を明確にし、発電、熱供給、送配電網それぞれについて、適切な条件を整える。
  • 送電網:送配電網の改善も必要。政府は、送配電網の認可プロセスを簡素化、合理化する法案を採択済み。
  • 原子力:クリーンエネルギーの拡大に向けて、原子炉10基程度相当の新設が必要。少なくとも2035年までに2.5ギガワット(GW)の原子力発電容量を確保する。

このほか、気候変動に関する前提条件として、原材料としての石油・ガスなどの化石燃料は全ての分野で段階的に廃止されなければならないとした。産業、運輸部門は、使用量の多さから特に重要と位置付けている。また、脱化石燃料、バイオエネルギー、二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留(CCUS)、メタン、水素の拡大、エネルギー効率の向上に向けては、(政府、産業にとどまらず)社会全体の貢献を求めた。さらに、エネルギー計画、電力市場、予備力・レジリエンスの強化には、適切なインセンティブが必要とした。

(菅野真、篠崎美佐)

(スウェーデン)

ビジネス短信 32875164b6c9c0f1