米FRB、政策金利の誘導目標据え置きも、利下げ含めた今後の政策対応に言及
(米国)
ニューヨーク発
2024年02月01日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は1月30~31日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を現在の5.25~5.50%に据え置くことを決定した(添付資料図参照)。2023年9月以降、4会合連続での据え置きとなった。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の調査では、市場関係者の95.9%が政策金利の据え置きを予想しており、今回の決定は市場の予想どおり。据え置きの決定は参加者12人の全会一致だった。
前回との違いは以下4点だ。1点目は、経済に関する認識で、「経済活動は堅調なペースで拡大している」と文言修正した。前回は第3四半期(7~9月)の強いペースからは幾分減速しているとしていたが、第4四半期(10~12月)の堅調さを評価したかたちだ。2点目は、銀行セクターのリスクや信用状況に係るパラグラフ全体を削除した。3点目は、2%の物価安定目標に向けた取組状況についての認識を追加しており、「雇用と物価安定目標の達成に向けたリスクのバランスが改善されつつある」と、現在までの取り組みに肯定的に言及した。ただし、「経済の見通しは不透明で、委員会は引き続きインフレリスクに細心の注意を払っている」ともしており、2%の物価安定目標に着実に向かっているかどうかについては留保もしている。4点目は、これまでの追加利上げの可能性についての文言を削除し、これに代わって「FF金利の目標レンジの調整を検討する際、委員会は今後のデータ、今後の見通し、リスクのバランスを慎重に評価する」と、利下げも含めた政策対応を取り得る文言を追加した。
会合後の記者会見では、ジェローム・パウエルFRB議長が「政策金利は今回の引き締めサイクルのピークに達している可能性が高く、経済がおおむね予想どおりに推移すれば、今年(2024年)のある時点で政策スタンスを元に戻すことが適切になる可能性が高い」と述べており、利上げサイクルの終了が事実上公式化されたかたちだ。ただし、利下げについては「3月までに利下げに必要な確信を得られるとは考えていない」とも述べるなど、市場の過度な期待にくぎを刺すかたちにもなっており、利下げを急いでいない姿勢もうかがわせた。
3月に行われる次回会合までには、消費者物価指数(CPI)と雇用統計が2回ずつ公表される予定だ。これらの結果次第だが、現時点では前回会合で示した見通しにおおむね沿って進めているもようだ。
なお、記者会見では最近の経済・雇用情勢について詳細を述べている(添付資料表参照)。経済活動は「堅調なペースで拡大している」としつつ、2023年の経済については「強い消費と供給状況の改善に支えられた」と総括した。金利上昇が住宅投資や企業の設備投資を圧迫しているとの認識は前月と同様。金融政策の決定に最も関連する雇用と物価の指標に関し、雇用については、(1)雇用者数は1年前のペースを下回っているものの、依然として好調、(2)失業率(12月:3.7%)は依然として低い、(3)雇用増は労働供給の増加が伴っており、25歳から54歳の労働参加率は上昇、移民は新型コロナウイルスのパンデミック前の水準を回復、(4)名目賃金は鈍化している、(5)求人数は減少など、個別の指標に触れながら、全体としては引き続き逼迫しているが、労働需要と供給のバランスは進んでいるとし、前回会合とほぼ同様の認識を示した。物価については「過去1年間で顕著に緩和したが、依然として長期目標の2%を上回っている」として、改善が進んでいることを評価しつつも、「過去数カ月のインフレ率の低下は歓迎すべきだが、インフレが目標に向かって持続的に低下しているという確信を得るには、さらなる証拠を確認する必要がある」として、前回会合から基本的なスタンスは維持した。
(加藤翔一)
(米国)
ビジネス短信 b3c35d9222803285