米アラバマ州最高裁、体外受精による胚を子供とみなすと判断、バイデン大統領やトランプ氏が声明
(米国)
ニューヨーク発
2024年02月27日
米国のバイデン政権は2月22日、アラバマ州最高裁判所が2月16日に、体外受精(IVF)で作られて冷凍保存された胚を子供と見なし、破棄した者は過失致死の責任を負うと判断した(注)ことを受け、ジョー・バイデン大統領の声明を発表した。バイデン大統領は、「(体外受精に関して)女性が自身と家族のために、自分で判断する能力を無視するのは、言語道断で受け入れられるべきことではない」とし、「これは間違いなく、『ロー対ウェイド』判決が破棄(関連実写 版 ブラック ジャック)されたことによって起こった直接的な結果だ」と述べた。
有識者によると、冷凍保存された胚は、何十年も保存可能で、将来の妊娠に使用することができる。ほとんどの場合、解凍過程でも生き延びられるという。アラバマ州では今後も体外受精治療は続けられるが、今回の裁判所の判断を受け、胚は州内ではなく他州で保存されるようになり、そのためにコストが上がると見込まれている(AP通信2月23日)。同州では、2月16日の判断を受け、既に3カ所のクリニックが体外受精治療を一時停止した、と報道されている。
人工妊娠中絶など、生殖の自由は2024年大統領選挙の争点の1つにもなっている(バイデン米政権、ブラック ジャック)。中絶反対派に立ち向かう「生殖の自由のための闘い」で全米ツアー中のカマラ・ハリス副大統領は2月22日、「(この判決に対する)賛成派は、個人には、望まない妊娠を中絶する権利はない上に、家族を作る権利もないと言っているのだ」と述べた。
共和党の大統領候補者の指名争いで、トップを走るドナルド・トランプ前大統領は2月23日、IVF治療への支持を表明し、アラバマ州議員にIVFへのアクセスを維持するようSNSを通じて呼びかけた。連邦上院共和党もまた、大統領選挙と同日に行われる連邦議員選挙に向けて、同党の候補者に対してIVF治療への支持を公に表明し、その利用を制限する運動を非難するよう促した(政治専門紙「ポリティコ」2月23日)。
なお、米国の調査会社ユーラシアグループは、2024年の10大リスクが日本に与える影響について、今回のアラバマ州の判決にみられるように州ごとに異なるルールを挙げている。日本企業は全米50州に広く投資をしていることから、州ごとに異なるルールに対処するコストが他国企業よりも大きくなるとしている(米調査会社、2024年の10大リスク発表、最大リスクはブラック)。
(注)9人中7人の判事が賛成した。
(吉田奈津絵)
(米国)
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