外国人労働者の受け入れ拡大目指す移民法公布
(フランス)
パリ発
2024年02月07日
フランスで、不法移民の国外追放を迅速化しつつ、人手不足が深刻化する分野の外国人労働者の受け入れ拡大を目指す新たな法律(移民法)が1月27日に公布された。同法は外国人の就労、社会への統合、国外追放、亡命、訴訟に係わる項目から成る。
主な内容は次のとおり(公共政策などの実写 版 ブラック ジャックサイト)。
〇外国人労働者について
- 建設、レストランなど人手不足が深刻な業界で働く不法移民の受け入れについて、3年以上フランスに滞在し、社会に統合しており、過去24カ月のうち少なくとも12カ月就労したことを証明する者に対し、雇用主による申請がなくても、各県の長官の判断により、例外的に臨時職員または給与所得者の滞在許可証を交付する措置を2026年末まで試験的に導入する。
- 資格を持つ給与所得者や企業経営者などに向けた滞在許可証「能力・才能証」の取得を簡素化する。
- 不法移民のプラットフォーム就労(注)を防ぐため、個人事業主(Auto Entrepreneur)のステータス取得に、労働を許可する滞在許可証の所持を義務付ける。
- 不法移民を雇用する企業に対する罰則を強化する。
〇移民の統合の改善について
- 複数年の滞在許可証を初めて申請する外国人に対し、最低レベル(A2)のフランス語習得を義務付ける。永住許可書や国籍取得の申請に必要なフランス語の習得レベルを引き上げる(B1、B2)。
- 外国人従業員のフランス語教育に係わる雇用主の義務を強化する。
〇国外追放の迅速化など
- 公の秩序の脅威となる外国人の国外追放を容易にするため、正規に滞在する外国人でも、3~5年の禁錮刑を科せられる違法行為で有罪判決を受けた場合、滞在期間の長さや家族の有無にかかわらず、国外追放の適用対象となる。また、これまでフランス領土からの退去義務(OQTF)の適用対象外だった特定の不法移民(入国時に13歳未満だった外国人、フランス人の配偶者など)を適用対象に組み入れる(ただし、未成年の外国人は引き続きOQTFの適用対象から除外する)。
同法は、上下両院で過半数を持たない少数与党政権が当初の政府案よりも移民への対応を厳格化した右派中道・共和党の修正案を受け入れるかたちで12月19日に成立させたが、12月26日と27日にエマニュエル・マクロン大統領、下院議長、120人を超える上下両院の議員が憲法評議会に違憲審査を求めていた。
その結果、憲法評議会は1月25日、86の条文のうち、移民受け入れのクオータ制の導入や、外国人への社会保障手当(住宅手当、家族手当など)の給付条件の厳格化、出生地主義による国籍付与の見直し、外国人留学生に帰国保証金を求めるなどといった35の条文について、「法の趣旨と関連がない」などとして破棄する決定をした。憲法評議会の決定により、共和党が加えた修正案はほぼ全て削除された。
(注)アプリなどのデジタルプラットフォームの仲介により、個人や組織間で労務を提供する形態の労働。
(山崎あき)
(フランス)
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