米下院がマヨルカス国土安全保障長官を弾劾決議、罷免の可能性は低いも国境措置への世論の関心は高い
(米国)
ニューヨーク発
2024年02月16日
米国の連邦議会下院は2月13日、共和党議員が提出した、国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官を弾劾訴追する決議案を、賛成214票、反対213票、棄権4票で可決した。同氏の国土安全保障長官としての任期中、移民および国境警備に関する法律に繰り返し違反し、その結果、毎年何百万人もの外国人が米国に不法入国し、その多くが不法に残留することになったとしている。2月6日に行われた1度目の採決は、否決されていた(関連ハイパーブラックジャック)。
今回も、賛成は全て共和党議員だった。前回、健康面の理由で棄権していたスティーブ・スカリス議員(ルイジアナ州)も、今回は賛成票を入れた。ブレーク・ムーア議員(ユタ州)は、前回に反対票を入れたものの、今回は賛成票を入れた。一方で、共和党の中でも、ケン・バック議員(コロラド州)、マイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州)、トム・マクリントック議員(カリフォルニア州)は、前回に引き続き反対票を入れた。
棄権4票は、前回賛成票を入れた共和党議員2人と、前回反対票を入れた民主党議員2人だった。ジュディ・チュウ議員(民主党・カリフォルニア州)は新型コロナウイルス感染、ロイス・フランケル議員(民主党・フロリダ州)とブライアン・マスト議員(共和党・フロリダ州)は航空機遅延を棄権の理由としている(ザ・ヒル 2月13日)。マヨルカス長官と同じく、両親がキューバからの亡命者であるマリア・サラザール議員(共和党・フロリダ州)は、棄権の理由を発表していないが、米国メディアのハフポスト(2月13日)によると、健康上の理由との回答があったという。
メディアの報道によると、閣僚が弾劾されるのは約150年ぶり。ただし、罷免には、上院で3分の2以上の賛成が必要となるため、民主党が多数派を占める中で、罷免の見込みは低いとの見方が一般的だ。2023年の年末から2024年の年始にかけて不法移民が急増し、11月に大統領選挙と連邦議会選挙を控える中、国境措置に対する国民の関心は高まっている。1月のハーバード大学米国政治研究センターとハリス・インサイト・アンド・アナリティクスによる調査によると、有権者が最も重要としている課題のトップは、移民問題(35%)となった。
なお、ジョー・バイデン大統領は下院での可決を受けて13日、「この弾劾は既に超党派の投票で一度失敗している。国境に関する真の懸念を持つ共和党議員は、このような政治的行為を演出するよりも、議会がより多くの国境管理のための資源を提供し、国境警備を強化することを望むべきだ。この根拠のない弾劾を推し進める共和党議員らは、マヨルカス長官を含めたわが政権が、国境警備を強化するために懸命に取り組んできた超党派の計画を、まさに今この瞬間に否定している」との声明を発表した。
(吉田奈津絵)
(米国)
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