パキスタン総選挙、「無所属」が勝利するも与党は連立協議へ
(パキスタン)
カラチ発
2024年02月19日
パキスタンで2月8日、連邦下院(定数336議席)のうち、女性60議席および非イスラム教徒10議席を除く小選挙区266議席を争う総選挙が実施された。事前予想では、軍の支持を得たとされる、かつて3回首相を務めたナワーズ・シャリフ元首相率いる連立与党、パキスタン・ムスリム連盟ナワーズ派〔PML(N)〕の圧勝が予想されていた。ところが、元クリケット選手の国民的英雄で、現在、汚職や機密カジノ 無料漏洩(ろうえい)の罪などで有罪判決を受け収監されている、イムラン・カーン元首相の野党パキスタン正義運動(PTI)が支援する無所属候補が多く含まれる「無所属」が、101議席を獲得し、事実上勝利した(添付資料表参照)。PML(N)の獲得数は75議席だった。
また、ベーナズィール・ブットー元首相の息子、ビラーワル・ブットー・ザルダリ元外相率いる連立与党パキスタン人民党(PPP)は、54議席を獲得した。PML(N)とPPPはすでに公式に連立協議に入っており、連立与党を形成する見込みだ。ただし、PTIの支持を受けた無所属議員の勢力が大きいため、議会情勢は予断を許さない状況でもある。PTIは、選挙法で義務付けられた党首や幹部を選出するための党内選挙を実施しなかったため、選挙管理委員会から選挙への参加を許可されなかった、という経緯がある。
パキスタンでは独立以来、クーデターが繰り返し起き、軍政の時代が長かったため、今日でも政治への影響力が強い軍の支持なしに政権をとることはできないといわれる。カーン元首相は、2018年総選挙で軍の支持を得て大勝し、政権の座に就いた。しかし、軍との関係を悪化させ、2022年4月に内閣不信任決議により退陣した。その後、PML(N)とPPPを中心とする、シャバーズ・シャリフ氏(ナワーズ氏の弟)率いる連立内閣が政権を握った。ナワーズ氏は、2018年に汚職の罪で有罪判決を受け収監されたものの、病気治療のために渡英し、そのまま英国にとどまっていたが、2023年10月に帰国した。2024年1月には最高裁が、刑事事件で有罪判決を受けた者に対する公職からの永久追放を破棄したことで、議会選挙立候補への道が開けた。選挙期間中にPTIは、AI(人工知能)動画を使いカーン元首相がサポーターに支持を呼びかける、SNS上でのバーチャル政治集会を開催しようとしたが、3回ともWi-FiとSNSへのアクセスが全国的に遮断された。なお、政府は技術的な問題だと説明している。
(山口和紀)
(パキスタン)
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