全米小売業協会、紅海情勢による物流混乱を懸念、米東海岸港湾労使交渉の行方にも懸念
(米国)
ニューヨーク発
2024年02月02日
米国連邦議会下院運輸・インフラ委員会沿岸警備および海上輸送小委員会は1月30日、イエメンの武装組織フーシ派の攻撃を受けて、紅海での物流混乱の影響に関する公聴会を開いた。全米小売業協会(NRF)のサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏が、同協会の会員メンバーによる物流の状況について証言した。
ゴールド氏は公聴会で、紅海からの船舶迂回による継続的な影響、輸送コスト・手数料の値上げや、米国港湾における混雑の可能性などに対する懸念を示した。同氏によると、紅海とスエズ運河から南アフリカ共和国の喜望峰周りへのルート変更により、航行時間が長期化しており、NRFの会員からより長い輸送期間を補うために、サプライチェーンに10~14日前後の追加の日数がかかることが報告されているとした。また、同氏によると、輸送期間の長期化が直接的な輸送コストの値上げのみならず、設備の供給不足を招き、欧州から米国への航路など、他の航路にも追加料金が適用されているという。今後も海上輸送の混乱が拡大することが予想される中で、NRFの会員の多くは、サプライチェーンを西海岸の港を利用する方向に戻したり、より取り扱いに注意を要しタイムリーな出荷が必要な貨物には航空輸送を利用したりしているという。
世界のコンテナ貿易の約28%がスエズ運河・紅海を経由しており、バンク・オブ・アメリカによると、そこで取り扱われるコンテナ貨物における主な品目には、家具・家庭用品が全体の29%と最も多く、衣類(18%)、家電製品(14%)、建材および資材(11%)なども多い(「CNBC」1月30日)。先行きについて、サプライチェーン管理会社ブルー・ヨンダーのグローバル産業戦略担当シニアディレクターのアン・マリー・ジョンクマン氏は「商品の遅延がさらに拡大し、米国の小売業者は今後数週間のうちに消費財の出荷遅延を発表し始めるだろう」と見込み、今後数カ月以内で「さらなるシュリンクフレーション(注1)」が起こると予想している(「フォックス・ビジネス」1月30日)。
なお、紅海情勢による物流混乱が漂う中で、国際港湾労倉庫労働者協会(ILA)と米国海洋連合(USMX、注2)の間で結ばれている現行の労働協約が9月30日に満了を迎える。これに関連して、ゴールド氏は、米国東海岸の港湾でストライキが起こりうる可能性についても懸念を示した。両者は2023年2月に労使交渉を開始しているが、労働者の報酬を巡る問題などで対立しており、今秋に東海岸の港湾で物流混乱が生じる可能性が高まっている。
(注1)商品の価格を維持したまま、その内容量を縮小すること。
(注2)米国東海岸およびメキシコ湾岸の港湾労働の雇用主を代表する。
(樫葉さくら)
(米国)
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