CBAMの本格適用がフランス製造業に与える影響に懸念

(フランス、EU)

パリ発

2024年02月14日

2026年1月から本格適用されるEUの炭素国境調整措置(CBAM)(CBAMを契機に、貿易担当者もブラック ジャック)の影響について、フランス製造業の収益減と大規模な雇用削減につながると懸念する民間調査会社の報告書が出ている。

民間研究機関レクゼコード(Rexecode)は、2023年6月に発表した「炭素国境調整措置は再工業化目標の脅威となる外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」と題した報告書の中で、CBAMの本格適用開始とそれに伴うEU排出量取引制度(EU ETS)の無償排出割当の段階的削減の影響を試算した。同報告書によれば、フランスの2019年の輸入額(5,754億ユーロ)のうち、CBAMの適用対象となる品目のEU域外からの輸入額は69億ユーロで、そのうち金属・金属製品のEU域外からの輸入額が55億ユーロで最大だった。

総輸入額に占めるCBAM適用品目の割合は1.2%と小さいことから、CBAMが製造業に与える影響は限定的だとする一方、EU ETSの無償排出割当の削減は川下セクターを含め幅広い業種に影響が波及するとした。生産コストの上昇による製造業の減益幅を、フランスだけで年間40億ユーロ、欧州全体で年間450億ユーロと試算した。

具体的に鉄鋼業を例に挙げ、鉄鋼メーカーがEU ETSの無償排出割当の廃止(炭素価格を1トン当たり100ユーロと仮定)による素材価格の上昇を全額価格転嫁すると仮定した上で、鋼材価格が20%値上がりすると試算した。これにより、国内138業種のうち、鉄鋼・鉄鋼製品を中間財として利用する77業種に影響すると指摘した。このうち、鋼材を大量消費する機械、自動車、建築素材など11業種では、付加価値額が最大で7.4%縮小すると見通した。

雇用への影響については2023年6月、製造業に特化したシンクタンクのラ・ファブリーク・ド・ランドゥストリーなどが発表した報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて、米国インフレ削減法(IRA)の施行でグリーン分野での投資誘致競争が激化する中、欧州におけるエネルギー価格の持続的な上昇とCBAMの本格適用とEU ETSの無償排出割当の廃止により、フランスの製造業は約14万5,000人の雇用を失う可能性があると指摘した。このうち、約2万8,000人がCBAMの導入と無償排出割当の廃止の直接的な影響によるものとなると分析している。

(山崎あき)

(フランス、EU)

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