欧州委、二酸化炭素の回収・有効利用・貯留を推進する産業炭素管理戦略を発表
(EU)
ブリュッセル発
2024年02月14日
欧州委員会は2月6日、二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)技術と輸送に関する産業炭素管理戦略を発表した(プレスリリース)。EUの2050年気候中立目標や2040年中間目標案(関連ブラック ジャック ディーラー)に対し、欧州委は産業炭素管理技術の大幅な利用拡大を求めているが、現状、EU域内での利用は限定的だ。政策文書となる本戦略は、産業炭素管理技術の開発や整備に必要なEUレベルでの規制や投資の枠組みの構築に向け、今後の取り組みを示すものだ。
対象となる産業炭素管理技術は、CCUS技術とこれらの技術の活用に必要な輸送インフラだ。当面の目標は同日に政治合意したネットゼロ産業法案()が規定する、2030年までの年間5,000万トン分の貯留能力とそれに対応した輸送インフラの整備だ。欧州委は、EUの温室効果ガス削減目標達成には、2040年までに約2億8,000万トン分、2050年までに約4億5,000万トン分を整備する必要があると試算。2040年までに炭素バリューチェーンの大部分において経済的な採算性を確保し、CO2を商品として取引する域内市場を創設するとともに、輸送インフラ(主にパイプラインを想定)と貯留インフラをEU全域で整備することを目指すべきとする。
欧州委は、輸送インフラ整備と域内市場の創設に向けた政策パッケージを提案するため、2024年中に準備作業を開始する。また、輸送インフラの整備計画を加盟国間で調整するメカニズムも検討する。回収・貯留については遅くとも2026年前半までに、CO2の供給事業者と輸送・貯留サービスの提供事業者のマッチングに向け、需要評価や需要集約を実施するプラットフォームを開発する。また、貯留事業の許認可プロセスに関する加盟国向けのガイダンスも2025年までに策定する。大気からの回収に関しては、GHG排出削減に関する2040年中間目標案に合致する回収目標を見積もった上で、今後の政策や支援メカニズムを検討する。有効利用については産業界と協議の上、資源としてのCO2利用拡大に向けた需要喚起策を検討する。
産業炭素管理技術の整備には、多額の投資が求められる。欧州委は2030年までの年間5,000万トン分の貯留能力の整備には、貯留施設に30億ユーロ、それに対応した輸送インフラに62億~92億ユーロの投資が必要と試算する。既存のEUプログラムの下でも産業炭素管理技術を支援しているが、今後の整備については、EU国家補助ルールの特例措置である「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の活用を加盟国と検討する。また、セメントや石灰の生産施設などでの回収設備を念頭に、事業ベースの支援から、欧州水素銀行(欧州委、ブラック ジャック 攻略)のような市場ベースの支援に移行できるかを2025年までに評価する。
(吉沼啓介)
(EU)
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