IMF、パキスタンへの7億ドル融資を決定
(パキスタン)
カラチ発
2024年01月17日
IMF理事会は1月11日、パキスタン政府に対するつなぎ融資のスタンドバイ取り決め(SBA)の第1次レビュー結果を承認し、30億ドルの枠のうち7億ドルの融資を即時実行することを決定した。IMFはプレスリリースで「パキスタンの経済見通しは依然厳しく、健全な政策の実施がなされるか次第だが、経済活動は安定を取り戻しつつある。SBAプログラム政策のタイムリー、かつ一貫した実施が極めて重要で、政府に失政の余地はない」と述べ、パキスタン政府に対してIMF要求事項の厳格な実行を要請した。
今回の決定で、SBA融資額は初回融資12億ドルと合わせて19億ドルとなった。この結果、パキスタン中央銀行(SBP)の外貨準備額は81億5,400万ドル(1月5日時点)に7億ドルが加わり、88億ドル前後になる見込み。これは年間輸入額の2カ月分の水準に相当する。外貨準備はSBA合意前の2023年5月には一時、輸入1カ月分にも満たない36億7,900万ドルにまで低下していたが、かなり改善した。
ある日系自動車部品メーカー幹部は1月16日、最近の輸入決済状況について「自動車メーカーの生産が限られていることもあるが、直近では信用状(L/C)開設や決済に特に問題はない」とジェトロに語った。乗用車販売台数は、2021/2022年度(2021年7月~2022年6月)に23万4,180台と最高を記録した後、景気悪化や高金利、輸入規制などから一気に市場が冷え込み、2023/2024年度の上半期販売台数は3万662台と、ピーク時の約4分の1にまで減少している。
SBAの要求事項は、財政政策、貧困削減と社会的弱者保護、金融政策と為替政策、エネルギーセクター政策、構造問題政策の5分野、25項目の数値目標からなる。電気・ガス料金の引き上げや税収増といった国民の痛みを伴うものも多いが、アンワールル・ハック・カーカル暫定政権は無難に乗り切っている。第2次レビューに向け、同政権は2月8日実施予定の連邦総選挙後の新政権発足まで、IMF要求に沿った経済運営をしていく必要がある。
(山口和紀)
(パキスタン)
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