カリフォルニア州・プロポジション65に係る訴訟通知事例が発生

(米国)

サンフランシスコ発

2024年01月16日

米国カリフォルニア州では、日本の食品メーカーやそれらの商品を扱う在米ディストリビューター、日系・アジア系食品小売店からジェトロに対し、州法である「プロポジション65」違反により訴訟を開始する旨の「60日前通知」の文書が送られてくるという連絡や相談が多く寄せられている。

プロポジション65(1986年安全飲料水および有害物質施行法、以下Prop65)は、発がん性物質や生殖障害を引き起こし得る化学物質が製品に含まれていることを州民に警告する義務(警告文の表示義務)などを定めている州法だ。

2023年1月にジェトロが開催した「(注)」で講師を務めたSGR法律事務所の小島清顕弁護士によると、「適用の幅が広く、対応について悩ましい側面があり、厳格な法令順守も難しいため、多くの訴訟のきっかけとなる法律だ。2023年だけで4,000以上の訴えがあり、言葉を選ばずに言えば、企業が『堂々と示談金巻き上げのターゲットにされる』可能性のある法律」とのこと。今回、あらためて小島弁護士および同事務所の岡本駿之弁護士に、日本の食品メーカーがこの法律にどう対応すべきかをたずねた。概要は次のとおり。

(問)日本の食品メーカーは、この法律にはどう対応したらよいか。

(答)この法律に関しては、発がん性物質や生殖障害を引き起こし得るとしてProp65に指定されている化学物質が製品に含まれていることを警告すればよいので、まずは必要に応じて警告表示をすることが求められる。その際、パッケージに英語以外で消費者向けのブラック ジャック ストラテジーがある場合には、英語に加えてその記載のある全ての言語で警告することが必要。

その上で、まずは自社の納品先との契約内容を把握し、Prop65の責任に関する合意があるのか確認をしておくことが必要。基本契約の締結がない場合には、日々やりとりをする見積書、発注書(注文書、Purchase Order)、注文請書、請求書なども契約書の1つであるので、Prop65に係る責任、商品の販売時の警告義務が当事者間では誰にあるのかを確認する。ない場合には、取引先と話し合う必要がある。

(問)栄養成分表示などは全て英語だが、商品名やパッケージの一部に日本語表記が入っている。それでも日本語での警告が必要か。

(答)商品名にしか日本語がない場合は可能性が低いと思われるが、全くないとは言えない。パッケージに日本語表記がある場合には、日本語での警告表示を貼った方が訴えられる可能性は下がる。

(問)Prop65に関する通知(60日前通知など)を受け取った場合、どう対応すればいいのか。

(答)通知内容を確認し、取引先などを含めた関係者を整理した上で、会社としてどう反論するかを考えておく必要がある。直ちに自社の法務部門、会社顧問弁護士に相談する必要がある。もちろん、納品先やその先などとの協議を行うことも必要だ。それぞれ代理人を立てて話し合うケースもあり得る。

米国に拠点のない日本企業が、米国の原告から訴訟の通知を受ける場合には、外国送達となるので、訴訟開始までの時間がかかる。正式に訴訟になる場合には、米国に拠点のない日本企業であれば、60日後とはならず、少なくとも数カ月程度の時間的猶予はあるだろう。

(問)中小企業であることや売り上げ規模が少ないという理由から訴訟および損害賠償が免除されるというケースはないのか。

(答)企業規模や売り上げにより直ちに損害賠償が免除されることにはならない。

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(芦崎暢)

(米国)

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