自動車の排ガス・燃費基準定める公式規格を改正

メキシコ環境天然資源省（SEMARNAT）は1月3日付連邦官報で、車両総重量3,857キログラム以下の車両の排ガス・燃費基準を定めるメキシコ公式規格（NOM）の改正を公布した。公布翌日から180日後の7月1日から施行される。

改正の基になったNOM（NOM-163-SEMARNAT-ENER-SCFI-2013）は自動車メーカー別に平均燃費基準（CAFE）を定めるもので、米国の制度にならって2013年8月末から導入した。環境に優しい車を多く販売した企業には、クレジット（注1）を付与する仕組みも組み込んでいる。

今回の改正NOM（NOM-163-SEMARNAT-SCFI-2023）の対象となるのは、メキシコ国内で販売される2027年モデルまでのガソリン車、ディーゼル車、代替燃料車、ハイブリッド車（HEV）、プラグインハイブリッド車（PHEV）、バッテリー式電気自動車（BEV）、レンジエクステンダーEV（REEV、注2）、燃料電池車（FCEV）の新車で、車両総重量400キログラムから3,857キログラムの車両だ。ただし、モデル単位の販売台数が年500台以下の場合には規制対象外となる。

2013年に出されたNOMからの主な変更点は次のとおり。

• 車両の大きさに応じて設定される1リットル当たりの二酸化炭素（CO2）排出上限目標の段階的引き下げ（2025年以降）
• 2025年～2027年モデルのBEV、PHEV、HEVなど環境性能の優れた車両を販売する企業は、同車両の総販売台数の50％を上限に、クレジット算出の際に高効率技術（TAE）メソッド（注3）を適用できる。
• エアコンの効率化、冷媒漏出防止など、クレジットを付与する条件の追加。
• 企業間クレジット取引に関する付属書の追加（付属書A）。
• 補償金を支払うことで基準達成とみなす条件の追加（付属書B）。
• 規制対象となる車両を生産する企業・団体がNOMに関連して付与されるクレジット内容をより明確に理解するための付属書の追加〔付属書F：エアコン、冷却システムの効率性、付属書G：オフサイクルクレジット（注4）〕。

SEMARNATはこの改正案を2018年9月28日付連邦官報に公示後、パブリックコメントを募集していた。改正版のNOM発出を控えた2023年3月、国家省エネルギー委員会（CONUEE）が不参画を発表したことによって一部内容の修正を余儀なくされ、あらためて修正内容に関するパブリックコメントを募集。2018年改正案の公示から4年以上の月日を経て、今回の改正版公布に至った。

なお、2018年に発出された改正案と比較すると、今回の改正NOMでは排ガス・燃費基準を緩和していたり、モデルイヤー（製造年）ごとの排ガス・燃費基準計算方法やクレジット計算方法の分類が大ぐくりになっていたりと、規制対象となる車両を生産する団体・企業がより適用しやすいものになっており、業界団体などが寄せた意見を反映した結果とみることができる。

（注1）自動車メーカーが当該年度に目標以上の排ガス抑制・燃費基準達成を実現した場合、その達成基準を超過した分に与える控除枠。次年度以降に目標基準を達成しなかった場合、その未達分を相殺する目的でクレジットを適用することが可能。

（注2）航続距離を延長する目的で小型発電機を搭載した電気自動車。

（注3）企業単位のCO2の加重平均排出目標から加重平均排出実績を控除して算出するクレジットの計算に際し、環境性能の優れた車両のタイプ別に設定された係数をそれぞれの車種の販売数量に乗じることで計算を有利にする方法。環境性能の優れた車両を多く導入すればするほど、クレジット計算に用いる加重平均排出量は少なくなり、クレジットが大きくなる。各車両タイプ別の係数は添付資料表参照。

（注4）オフサイクルクレジットとは、燃費計測で反映されない燃費改善技術（オフサイクル技術）を評価する制度。NOMではオフサイクル技術として、高効率エクステリアライト、スタート・ストップシステム付きエンジン、ソーラーパネル、熱コントロール（熱反・熱吸収ガラス、太陽光反射塗料、シートベンチレーションなど）、タイヤ空気圧のモニタリングシステムなどを挙げている。

（渡邊千尋）