カザフスタン国営原子力企業、硫酸不足でウラン生産量が一時縮小へ
(カザフスタン、イタリア)
タシケント発
2024年01月29日
カザフスタン国営原子力企業カズアトムプロムは1月12日、ウラン製錬に必要な硫酸の不足と鉱床開発の遅延により、2024年のウラン生産量の縮小が予想されると発表した(同社発表1月12日)。
世界的にウラン需要が高まり、新規、既存顧客との中長期供給契約が成立し、供給先が安定して確保できる見通しがついたことで、2023年9月に同社が発表した生産計画では、2023年が地下資源利用契約に基づく生産量の80%だったところ、2024年に90%、2025年には100%に戻すとしていた。
カズアトムプロムによると、硫酸は農業資材としても国内外の需要が高まっており、ウラン製錬に必要な量の確保が難しくなっている。生産計画量100%に当たる2万6,000トンのウランを製錬するためには、200万トン以上の硫酸が必要とされる(カズインフォルム2023年12月22日)。同社は、国内で新規ウラン生産に必要な硫酸を確保するため、カザフスタン南部クズルオルダ、北部ステプノゴルスクの既存の硫酸工場(合計年間生産量70万トン)に加え、トルキスタンに硫酸工場(同80万トン)を建設する計画を進めてきた(フォーブスKZ 2023年3月17日)。2024年1月19日には、カシムジョマルト・トカエフ大統領のイタリア公式訪問の際、カズアトムプロムとその親会社であるカザフスタン国家福祉基金サムルク・カズィナが、イタリアの化学薬品メーカーのバレストラとの間でトルキスタンの硫酸工場建設に関する覚書に調印した(カピタルKZ 1月19日)。工場建設は2024年に開始され、2026年に稼働する予定だ。
世界原子力協会のデータによると、2022年のカザフスタンのウラン生産量は2万1,227トンと世界1位で、シェアは43%を占め、カナダ(15%)とナミビア(11%)が続いた。ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、欧米諸国は原子力発電の増強計画を進めており、ウランの市場価格は高騰している(ブルームバーグ1月12日)。
(増島繁延)
(カザフスタン、イタリア)
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