米国務省、南米とインド太平洋つなぐ海底ケーブル計画を歓迎

(米国、チリ、オーストラリア)

調査部米州課

2024年01月18日

米国国務省は1月11日、チリ政府が同国とオーストラリアをつなぐ海底ケーブル計画「フンボルト」で米グーグルと提携すると発表したことを受けて、歓迎の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出した(2024年1月18日記事参照)。

「フンボルト」はフランス領ポリネシアを経由し、チリとオーストラリアをつなぐ海底ケーブル計画で、南米とインド太平洋を直接つなぐ海底ケーブルとしては史上初となる。国務省は同計画が完成すれば、太平洋に信頼できて安全なルートを追加することで、インターネットのアクセス範囲や、信頼性、強靭(きょうじん)性を向上させることにつながると評価している。また、この海底ケーブルと安全性の高い第5世代移動通信システム(5G)ネットワークが合わさることで、南米と太平洋島しょ国のデジタル接続性と世界経済への統合を推進すると期待を示した。完成は2026年に予定されている。

今回の件はチリ政府が2016年に立ち上げた計画で、これまでに中国政府が接続先をオーストラリアではなく、中国の上海とすることを提案するなど、複数の案が浮上していた。ロイターなど報道機関によると、中国に接続された場合にはデータが中国政府に収集されると懸念した米国政府が外交攻勢を強めて、今回のルートに収まったとされる。バイデン米政権は中南米諸国との関係強化を図る中国を意識して、「経済繁栄のための米州パートナーシップ(APEP)」を立ち上げ、2023年11月には初の首脳級会合を首都ワシントンで開催した()。バイデン政権がインド太平洋地域の14カ国と進めている「インド太平洋経済枠組み(IPEF、注)」と類似した経済枠組みで、参加国間でルールの調和や協力促進を目指すものだ。国務省の声明では、今回の「フンボルト」の発表はAPEP首脳級会合に続くものと強調している。米国の調査会社によると、国際インターネット通信の95%以上は、世界に400本以上敷設されている海底ケーブルを経由して行われる。米政府はそこで取り扱われる軍事機密を含むデータはサイバー攻撃や諜報活動に対して脆弱(ぜいじゃく)とみており、今後も海底ケーブル計画には深く関与していくことになりそうだ。

(注)IPEFの最新ブラック ジャック オンラインはジェトロのビジネス短信特集「」を参照。

(磯部真一)

(米国、チリ、オーストラリア)

ビジネス短信 5baf52c8659ae3f9