米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、バルカンロケットの初飛行に成功
(米国)
調査部米州課
2024年01月10日
米国の航空宇宙大手ボーイングと防衛大手ロッキード・マーティンの合弁会社であるユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)が1月8日に、バルカンロケットの初飛行に成功したと発表した。打ち上げはフロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地で行われた。
同社は、2005年にボーイングとロッキード・マーティンにより設立が発表され、2006年から操業を開始した。これまでにデルタ2、デルタ4、アトラス5などのロケットを運用し、155回の打ち上げに成功していた。
今回打ち上げに成功したバルカンロケットは、2014年2月のクリミア危機を起因とする米国政府のロシアに対する制裁措置や、同制裁への抵触を指摘する同業の米国スペースXによる訴訟を受け、それまで購入していたロシア産RD-180ロケットの代替を目指すべく作られた。2015年に「バルカン」の名称を発表し、2018年9月にアマゾン設立者のジェフ・ベゾス氏が設立した航空宇宙企業のブルーオリジンからBE-4エンジンを購入することを正式に決定した。2020年中の初飛行を目指していたが、延期が重なり2024年に初飛行となった。
バルカンには貨物として、宇宙ロボット技術開発の米国アストロボティックによる月面着陸機の「ペレグリン」などが搭載されている。当機の月面着陸は2月23日に予定されており、無事に着陸すれば、米国にとって半世紀ぶりの月面着陸ということに加え、世界的にも民間初の月面着陸となる予定だ。しかし、打ち上げから1時間以内に、推進機に致命的な不具合が見つかったと発表されており、日本の航空宇宙企業アイスペースに続き、民間月面着陸成功へのハードルの高さが浮き彫りとなった。アストロボティックは現在、最大限の成果を得られるよう事態の収拾に取り組んでいるとしている。
ULAは既に、アマゾンが提供予定の衛星コンステレーション(注)による、世界のブロードバンドアクセスの拡大を目指すイニシアチブ「プロジェクト・カイパー」に用いられる衛星を、バルカンで38回打ち上げる契約を結んでいる。
(注)中・低軌道に打ち上げた、多数の小型非静止衛星を連携させて一体的に運用する仕組み。
(谷本皓哉)
(米国)
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