バイデン米政権、UFLPAの事業者リストに中国企業3社追加、人権関連の制裁発動も
(米国、中国)
ニューヨーク発
2023年12月12日
米国国土安全保障省(DHS)は12月8日、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づく輸入禁止対象の事業者をまとめた「UFLPAエンティティー・リスト」に中国企業3社を追加すると発表した。12月11日付の官報で公示し、即日有効となった。2022年6月のUFLPA施行以降、同リストが更新されるのは2023年9月に続いて4回目(2023年9月27日記事参照)。
UFLPAでは、新疆ウイグル自治区で生産した物品だけでなく、UFLPAエンティティー・リストの掲載事業者が全体または一部を生産した製品も輸入禁止対象となる(米国土安全保障省、ギャンブル)。DHSが議長を務める強制労働執行タスクフォース(FLETF、注1)は今回、砂糖の製造や輸入を行う中糧糖業(COFCO Sugar Holding)、磁気デバイス製造の四川経緯達科技集団(Sichuan Jingweida Technology Group)、繊維製造の安徽新雅新材料(Anhui Xinya New Materials)の3社をリストに追加した。今回の追加により、リスト掲載事業者は30社・団体となった(注2)。
また、バイデン政権は12月8日、人権侵害への関与を理由に、13カ国の個人37人に対するビザ制限や制裁を発表した。12月10日の世界人権デーに合わせた措置としている。
制裁は、国務省と財務省がそれぞれの権限で発動した。国務省は「イラク・シリア・イスラム国(IS)」系組織の幹部2人を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。財務省は9カ国の個人20人をSDNに指定した。SDNには、在米資産の凍結や、米国人(注3)との資金・物品・サービスの取引禁止を科す(注4)。
制裁対象のうち、中国の個人2人は2020年6月に成立したウイグル人権政策法(UHRPA)に関連して指定された。同法は大統領に対し、新疆ウイグル自治区のウイグル族やそのほかの少数民族に対する人権侵害に責任ある者について議会に報告を求めるとともに、当該者に制裁を科すよう義務付けている。国務省は今回の制裁に伴い、連邦議会にUHRPAに基づく報告書を提出した。
UHRPAについては、連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」のマイク・ギャラガー委員長(共和党、ウィスコンシン州)が9月、バイデン政権に対し、制裁を強化するよう要請していた(2023年9月21日記事参照)。同議員らは今回の制裁発動を歓迎しつつも、制裁対象など、その内容には疑問を提起する声明を発表した。
(注1)DHSのほか、米国通商代表部(USTR)、労働省、国務省、司法省、財務省、商務省が参加する省庁横断組織。UFLPAの執行戦略の策定やUFLPAエンティティー・リストの整備を担う。
(注2)掲載事業者と併せて指定されている子会社や関連組織を除く。
(注3)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。
(注4)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDN指定を今回受けた個人の詳細は財務省のウェブサイトで確認できる。
(甲斐野裕之)
(米国、中国)
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