V5オペレーションに基づくIVA源泉課税の監視を強化

(メキシコ)

メキシコ発

2023年12月19日

メキシコ大蔵公債省は12月12日、連邦官報で2023年度貿易細則(RGCE2023)第6次改定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布した。第6次改定の目的は、AEO認定(注1)を取得したマキラドーラ(注2、以降マキラ)を経由し、外国居住者が国内事業者に対して保税在庫を販売するオペレーション(通称、「V5」オペレーション、注3)に際して、国内事業者による付加価値税(IVA)の源泉申告納税を徹底させ、保税在庫を移転する側のマキラにも連帯責任を負わせることだ。AEO認定マキラは2024年1月1日以降、後述する「V5」再輸出申告に先立ち、E15フォーマットPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で連帯責任受諾意思表明書を作成して国税庁(SAT)のウェブサイトで送信し、その受領通知を「V5」再輸出申告書に添付する必要がある。

IVAの源泉申告納税を失念しないよう細心の注意を

「V5」オペレーションの問題点は、1つの取引に対し、二重でIVAが課されることだ。IVA法第1条はIVAの課税対象行為として、(1)財の国内販売、(2)サービスの国内販売、(3)財のレンタル・リース、(4)財・サービスの輸入、と定めている。「V5」オペレーションは確定輸入申告を伴うため、その時点で輸入IVAが課税される。他方、メキシコ領土内で外国居住者から国内事業者に所有権が移るため、(1)の国内販売の概念にも当てはまる。売り手が外国居住者の場合、IVA法第10条に基づき、買い手である国内事業者がIVAの月次申告納税において源泉申告納税を行う必要がある(添付資料参照)。

源泉申告納税を失念してしまい、後からSATに税務調査などで指摘を受けて追徴される事例が頻発している。IVAは最終消費者が負担する税金であるため、中間事業者はIVAの仮払い処理を行った上で、最終的には売り手から回収、あるいはSATに還付申請が可能だが、後から追徴された場合は仮払い処理ができないため、注意が必要だ。また、本改正で連帯責任を負うことになったAEO認定マキラは、国内事業者側がIVAの源泉申告納税を失念してSATに指摘された場合、罰金を除く追徴額(注4)について連帯責任を負うことになる。

(注1)AEO(認定事業者、スペイン語ではOEA)の認定は国税庁(SAT)から取得。

(注2)輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業プログラム(IMMEX)に登録した企業が実施できる「保税受託加工オペレーション」。部品・原材料と加工後の最終製品の所有権は双方とも外国居住者にあり、マキラは外国居住者に対して、受託加工サービス代金のみを請求する。2014年以降、マキラの収入は100%受託加工サービスによるものに限定されるため、マキラが保税在庫の輸入ステータスの変更を行った上で国内販売をすることはできない。

(注3)「V5」オペレーションとは、外国居住者がマキラに委託生産させた保税製品を、IMMEX(輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業プログラム)などの保税スキームに登録していない国内事業者に対して、製品を一度国外に持ち出すことなく国内販売するオペレーションのこと。マキラが税関に対して「V5」の申告コードで保税在庫の再輸出申告を行い、国内事業者が「V5」の申告コードで確定輸入申告を行うことから、「V5」オペレーションと呼ばれる。IMMEXやマキラが持つ保税在庫は、IMMEX企業間などを除けば、原則として確定輸入ステータスに切り替えた後でなければ国内販売できない。「V5」オペレーションは同原則の例外で、物理的に国外に持ち出さなくてもマキラから外国居住者に再輸出されたと見なされるため、国内事業者が確定輸入申告することで外国居住者から国内事業者への販売が可能になる。

(注4)税関法第53条、連邦税務総則法(CFF)第26条に基づき、租税の支払いについて連帯責任を負うものは、追徴される税金と同インフレ調整分、延滞金利などを負担する義務があるが、罰金の負担はない(本来の租税債務者が罰金を支払う)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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