AI戦略を刷新、先端製造や医療など導入事例拡大へ
(シンガポール)
シンガポール発
2023年12月12日
シンガポールのローレンス・ウォン副首相兼財務相は12月4日、人工知能(AI)の新たな国家戦略「国家AI戦略(NAIS2.0)」を発表した。ウォン副首相は「先端製造や金融サービス、ヘルスケア、教育、公共サービスなどの分野でAIの革新的な導入事例を拡大していきたい」と述べた。
NAIS2.0は、同国が2019年に発表した国家AI戦略について、生成AIなど最近の技術発展を受けて、内外の業界関係者から意見を収集した上で改定したもの。同国は同改定版で、(1)AIが気候変動や公衆衛生など国際課題の解決手段となり、(2)AIと共存する未来に国民の暮らしとビジネス活動の活性化の実現を目指すとしている。その上で、政府や産業、研究機関が向こう3~5年間で取り組む15の行動計画を設定した(詳細は添付資料参照)。
同行動計画では、産業界のAI開発企業と利用企業を結ぶ物理的スペースの設置のほか、企業のAI導入を促進するための支援拡充が盛り込まれた。また、AIの普及拡大を支えるためのコンピュータ処理能力やデータ量拡大を支えるインフラを拡充する計画だ。このほか、行政サービスの効率化のためにAIを積極的に活用する方針だとしている。
AI専門の内外の人材、1万5,000人に拡大へ
また、同行動計画では、AIの専門人材を1万5,000人へと増加するとの目標が設定された。地場経済専門紙「ビジネス・タイムズ」によると、同国のAI専門人材は現在4,500人。政府はAI専門の研修プログラムの拡大などを通じて地元の人材育成を進めると同時に、世界最先端のAI開発者を誘致する専門部隊を設置する計画だ。
ウォン副首相はAI普及が雇用に与える懸念に言及し、「(AI普及拡大によって)業務内容が変わり、AIを効果的に使うための研修が必要になるが、仕事がなくなるわけではない」との考えを示した。同副首相は、政府が労働者のAIスキル向上への投資を拡大し、「労働者の全てがAIを活用できる(AI-ready)にする」方針を強調した。
(本田智津絵)
(シンガポール)