政府が「エネルギー・気候戦略」を発表

(フランス)

パリ発

2023年12月07日

フランス政府は11月22日、2050年でのカーボンニュートラル(炭素中立)達成に向けた「エネルギー・気候戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を公表した。現在、フランスの最終エネルギー消費のうち37%を石油、21%を天然ガスが占めるが、化石燃料から脱却する最初の先進工業国になることを目指す内容となっている。11月22日から12月22日までパブリックコンサルテーション(公開諮問)を実施し、2024年初めにも閣議決定する予定の「エネルギー生産法案」と、同年中に採択される「エネルギー複数年計画(PPE)に係わるデクレ(政令)」に盛り込まれる見込み。

同戦略は、エマニュエル・マクロン大統領が2022年2月にフランス東部ベルフォールで行った演説を発展させた内容となっており(2022年2月17日記事参照)、省エネを促進しつつ、化石燃料依存からの脱却と低炭素電力・地域暖房網の拡大などを図る。

省エネについては、2050年に最終エネルギー消費量を2021年比で40~50%削減するため、2030年のエネルギー消費量の削減目標を2012年比で30%減とし、前PPEの2028年の目標の2012年比16.5%減から引き上げる。特に建築物の省エネ改築、化石燃料を利用した暖房システムからの脱却、電気自動車(EV)の普及、製造業の脱炭素化などへの支援を通じて達成を目指す。

エネルギー供給の低炭素化については、2027年に石炭火力発電を廃止するとともに、2030年の低炭素電力の発電量を2021年比で10%増、2050年に同55%増とし、低炭素熱の供給量を2035年までに2021年比で倍増させる。

原子力発電については、既存原子炉の運転期間の60年への延長を検討しつつ、可能ならば発電容量を増強し、2030年までに発電量を現行の279TWh(テラワット時)から360TWh~最大400TWhまで拡大する。EPR(欧州加圧水型炉)を改良した6基のEPR2建設(関連ブラック ジャック ルール)について2024年末に最終決定を行い、建設計画の開始を確認する。また、8基のEPR2追加新設〔総発電容量13ギガワット(GW)〕についても検討を続け、2026年末までに決定する。

再生可能エネルギーについては、2035年の設備容量目標として、太陽光発電で75~100GW、陸上風力発電で40~45GW、洋上風力発電で18GWを設定した。バイオガス生産量については、2030年までに現在の約5倍に当たる50TWhを目標として設定した。脱炭素水素(注)の設備容量については2030年に6.5GW、2035年に10GWの目標を定めた。

(注)製造工程・利用過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない水素のこと。フランスでは、原子力または再生可能エネルギー由来の電力を利用して生産された水素とする。

(山崎あき)

(フランス)

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