EU、修理条項の導入含む意匠保護パッケージに政治合意
(EU)
デュッセルドルフ発
2023年12月12日
EU理事会(閣僚理事会)は12月5日、共同体意匠規則を改正する規則案と、意匠の法的保護に関する指令案に関して、欧州議会と暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース)。両法案はEU理事会と欧州議会でそれぞれ正式に採択した後、発効する見込み。現時点で今回合意に達した文書は公表されていない。
同規則案と指令案は、欧州委員会が2020年11月に発表した知的財産行動計画(注1)で示した行動のうちの「EU 意匠保護の近代化」に沿ったもので、2021 年にパブリックコンサルテーション(公開諮問)を実施し、2022年11月に欧州委が提案していたもの。その後、EU理事会が2023年9月に、EU理事会の修正案となる「一般アプローチ(General Approach)」を採択していた。
欧州委によると、指令案と規則案は、それぞれ1998年と2002年に制定された現行法を更新して、EU 全域での意匠登録手続きを容易にし、EUと各加盟国の制度間の手続きをさらに調和させるもので、EU全域での「修理条項」(注2)の導入や、3D プリンターで複製可能な意匠を保護するための新しいルールの導入などを含んでいる。
「修理条項」とは、例えば、スペアパーツに対する意匠権の行使を制限するものだ。そのため、従来、意匠権を有する者(例えば、自動車メーカー)は導入には反対の立場だった。しかし、今回の改正案では、修理条項によってスペアパーツ市場の自由化を促進し、より低価格で消費者に修理部品の提供を可能にすることを目的としている。欧州委の提案では、規則案にのみ修理条項が含まれていたが、EU理事会と欧州議会は指令案にも修理条項を追加することで合意した。
なお、この改正に関する詳細は、ジェトロの欧州知的財産ニュースを参照。
(注1) 知的財産行動計画は、「知財保護の改善」「中小企業による知財利用の促進」「知財共有の促進」「模倣品との闘い、知財権行使の改善」「グローバルレベルの競争環境の促進」の5主要分野の施策を含んでおり、「知財保護の改善」でEU意匠保護の近代化に言及していた。
(注2) 複雑な製品の交換部品について、元の外観を回復するために使用されるが、修理の目的に限られ、交換部品が元の部品と全く同じ外観の場合(例えば、自動車の破損したドアや壊れたライトで、自動車の外観を元のようにするために交換する必要がある場合など)、意匠保護の対象から除外するもの。
(鹿戸俊介、中村勇介)
(EU)
ビジネス短信 7709dfd828267f19