欧州自動車工業会、脱炭素化や競争力強化に向けてマニフェストを発表
(EU)
ブリュッセル発
2023年12月06日
欧州自動車工業会(ACEA)は11月29日、2024~2029年のEUに対する政策提言を含むマニフェストを発表した(プレスリリース)。EUでは2024年に5年に1度の欧州議会選挙が6月に実施され、10月末に現欧州委員会の任期が終了する。同文書は、競争力の高いモビリティ・エコシステム構築に向けて、供給、生産、需要の3つの柱で脱炭素化やデジタル化の推進などに必要な取り組みを示す。
ACEAのルカ・デメオ会長〔フランスのルノーグループCEO(最高経営責任者)〕は記者会見で、自動車業界は大きな転換期にあり、国際競争の中で結束力のある産業戦略が必要と強調。欧州では2030年までに毎年多くの新規制の適用が始まる中、EUだけでなく、国や地方自治体を含む政策立案者との建設的な対話が必要と述べた。
また、ACEAのシグリッド・デ・ブリーズ事務局長はEUの2023年の乗用車の新車登録台数について、現時点の予測で約1,040万台と発表。前年比約12%増の大幅増だが、2019年(新型コロナウイルス感染拡大以前)と比較すると約20%少なく、いまだ回復途上にあると強調した。2024年は成長率が鈍化し、前年比約2.5%増の約1,070万台になると見込んだ。近年好調なバッテリー式電気自動車(BEV)については、2023年の新車登録全体に占める割合は約14%だが、2024年は約20%に拡大すると予測した。
「日本の軽自動車普及は欧州が実現すべき好例」と小型EV投入に意欲
デメオ会長は、欧州製の手頃な価格の小型車のモデル数を増やすなど、より多様なゼロエミッション車の提供に向けて、政策立案者と協力する必要があると述べた。小型車は欧州市場では採算性が低いセグメントだが、大型化で販売価格が上昇する中で、BEVをより安価で提供できる手段だとした。また、日本の軽自動車を例に挙げ、駐車スペースを大きくとらないなど都市圏居住者にとって利便性が高いとし、小型車の展開に自信を見せた。一方で、EUのBEV市場はいまだ成長期にあるとして、消費者への購入インセンティブ措置継続の必要性を強調した。
このほか、生産コストの増大や競争力の低下につながるとして、世界的にみても高止まりしている欧州のエネルギーや鉄鋼価格に懸念を示した。鉄鋼価格上昇の要因には、エネルギー価格の高騰もあると指摘。メーカー各社が調達強化を急いでいる価格競争力が高いグリーン鉄鋼〔生産過程での二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減した鉄鋼〕の生産拡大に向け、エネルギー価格の低下が必要と強く主張した。
欧州自動車業界内でも意見の相違があるとされる、EUの中国製BEVに関する反補助金調査()に対するACEAの見解については、調査結果を待つとしてコメントを控えた。
(滝澤祥子)
(EU)
ビジネス短信 2eea994d249d7921