10月の米消費者物価指数、前年同月比3.2%上昇と大きく鈍化

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月15日

米国労働省が11月14日発表した2023年10月の消費者物価指数(CPI)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年同月比3.2%上昇と、前月の3.7%上昇から大きく鈍化し、市場予測(3.3%上昇)も下回った。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同4.0%上昇で、前月の4.1%上昇から伸びが引き続き低下した。前月比では、CPIが0.0%上昇と横ばい(前月0.4%上昇)、コア指数が0.2%上昇(前月0.3%上昇)と、いずれも伸びが低下した(添付資料図参照)。

品目別に前年同月比でみると、エネルギーは4.5%下落(前月0.5%下落)と下落幅が拡大した。うち、ガソリンは5.3%下落(前月3.0%上昇)した。食料品は3.3%上昇(前月3.7%上昇)、うち外食は5.4%上昇(前月6.0%上昇)と伸びが引き続き鈍化した。財は0.1%上昇(前月0.0%上昇)と10月も上昇幅はわずかだった。内訳では、中古車が12カ月連続のマイナスとなる7.1%下落となったほか、新車も1.9%上昇(前月2.5%上昇)と伸びが鈍化している。サービスは5.5%上昇(前月5.7%上昇)と、引き続き伸びが鈍化した。物価のうち約3割のウエートを占める住居費は、6.7%上昇(前月7.2%上昇)と伸びが大きく鈍化した。内訳では、帰属家賃は6.8%上昇(前月7.1%上昇)、賃料は7.2%上昇(前月7.4%上昇)だった。また、自動車保険など運輸サービスが上昇した結果、住宅を除くサービス価格は3.0%上昇(前月2.8%上昇)となった。医療保険料の算出方法の見直しによる影響が懸念されていた医療サービスは2.0%下落(前月2.6%下落)した(添付資料表参照)。

今回の結果について、市場はおおむね好意的に受け止めており、米国銀行大手ウェルズ・ファーゴのチーフエコノミスト、ジェイ・ブライソン氏は「追加利上げのハードルはますます高くなりつつある」と述べるなど、次回12月の連邦公開市場委員会(FOMC)における連邦準備制度理事会(FRB)政策金利の利上げ観測の後退や利上げ終了を期待する声も多く聞かれる。

一方で、今回のCPIを押し下げた要因のエネルギーおよび住居費については、今後の動きに不透明感が残る。エネルギー価格に関しては、OPECは11月に公表したマーケットレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて、10月の価格下落は中東情勢の緊張に伴う投機的な動きによるものと報告しており、ロシアやサウジアラビアといった産油国の減産スタンスなどエネルギー価格を高止まりさせる構造的な要因は変化していない。このため、米国エネルギー省は、2024年の原油価格が1バレル当たり89ドル程度まで上昇すると見込んでいる。10月CPIのガソリン価格をはじめとするエネルギー価格の下落は一時的なもので、今後は再び押し上げ要因になる可能性が高い。住居費については、大きく鈍化しはじめてはいるが、依然として高水準であるほか、足元では金利高や供給不足を要因として住宅価格が上昇に転じており、中期的にはリスクになる可能性がある。利上げの終了を結論付けるには、これら2分野の動向に、引き続き注意が必要だ。

コア指数やサービス価格については、着実に鈍化傾向にはあるものの、この進捗は賃金の動向などにも大きく左右される。12月のFOMCまでには、まだ雇用統計も公表される予定で、これを基に労働需要がどの程度軟化しているのかといった点も加味しながら今後の見通しを判断することになるだろう。

(加藤翔一)

(米国)

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