中国発の衣料品EC21 トランプのシーインが米国でIPO申請、2024年に上場の可能性
(米国、中国、シンガポール)
ニューヨーク発
2023年11月30日
衣料品の電子商取引(EC)を手掛ける中国発のSHEIN(シーイン)は11月27日、米国で新規株式公開(IPO)の申請を非公開で行った。複数のメディアが報じた。関係筋によると、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーがIPOの主幹事として採用されており、早ければ2024年に上場する見通しだ。
2008年に中国で設立され、シンガポールに本社を置くシーインは、最新の流行を意識したデザインの衣料品を低価格で販売するファストファッションブランドで、ソーシャルメディアを通じて若い顧客に対応することで、業界での存在感を高めてきた。現在は世界150カ国以上に展開しており、2022年の売上高は230億ドル、総利益は8億ドルで、2023年第1~3四半期は過去最高の売上高と利益を計上している(「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙電子版11月27日)。同社は2023年8月、米国カジュアル衣料チェーンのフォーエバー21などの運営会社であるスパーク・グループとの戦略提携を発表しており(米衣料品店フォーエバー21の運営会社、中国発の衣料品ECブラック)、これを通じてフォーエバー21の米国内店舗に進出する機会を得るなど、米国市場でのプレゼンス向上に注力している。
ロイター(2023年11月28日)によると、シーインは少なくとも3年前から米国でのIPOを視野に入れていたが、米中の政治的摩擦などの逆風に阻まれ、上場に向けての申請が延期されていた。同社は、低価格帯の衣料品や家庭用品の中国での製造に当たって、新疆ウイグル自治区で契約製造業者を使っている可能性が懸念されており、ウイグル族による強制労働を利用しているとの批判に直面している。2023年5月には超党派の連邦議会議員が米国証券取引委員会(SEC)に書簡を送り、同社がウイグル族による強制労働を利用していないことを確認するまではIPOを認めないよう要請しており(AP通信2023年8月24日)、同社がSECから上場の承認を得る上で、自社のサプライチェーンが「クリーン」であることを、規制当局に納得させることが最大のハードルになるとみられている。
ブルームバーグ(2023年11月28日)は、シーインのIPOが実現した場合、900億ドルの企業評価額を目指す可能性がある、と報じた。同社が10%の株式を売却し、この評価額で約90億ドルを調達した場合、史上5番目(注)の規模の消費者向けIPOになるとみられる。
(注)ブルームバーグによると、これまで上場を果たした最も評価額が高い消費者企業の上位4社は、(1)米国大手自動車メーカーのゼネラルモーターズ(181億ドル)、(2)米国新興電気自動車(EV)メーカーのリビアン・オートモーティブ(137億ドル)、(3)韓国LG化学の電池子会社、LGエネルギーソリューション(108億ドル)、(4)ドイツ高級自動車メーカーのポルシェ(91億ドル)。
(樫葉さくら)
(米国、中国、シンガポール)
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