全米自動車労働組合(UAW)、フォード最大規模のケンタッブラック ジャック ストラテジー工場でストライキに突入
(米国)
ニューヨーク発
2023年10月13日
全米自動車労働組合(UAW)は10月11日、ケンタッブラック ジャック ストラテジー州ルイビルにあるフォードのトラック工場でのストライキに突入した。同日に行ったフォードとの労使交渉に進展がなかったことが背景にある。UAWによれば、同工場の組合員は約8,700人に上り、ストライキに参加している拠点では最大規模。
オートモーティブ・ニュース(10月12日)によれば、9月15日のストライキ開始から今回の拡大を含め、フォードだけで4州8カ所で1万6,600人、「デトロイト3」およびサプライヤー企業を合わせると少なくとも23州61カ所で約3万4,115人の組合員がストライキに参加している。また、一連の業務停止などによる一時解雇人数は、フォードで約1,923人、デトロイト3およびサプライヤーでは7,885人に上るなど、その影響は拡大している。
フォードは、UAWが要求する、賃金をインフレ率と連動させる生計費調整(Cost of Living Adjustment, COLA)の採用などには同意しているが、4年間で32%の賃金上昇対しては、3年間で23%とするなどの対案を提出している(注)。UAWのショーン・フェイン会長は、フォードとの交渉に関し「われわれは明確な態度を示し、十分に待ったが、フォードは(われわれの)メッセージを受け取っていない」と述べ、さらなる賃上げなどを求めて交渉を続ける構えだ。
フォードによれば、ケンタッブラック ジャック ストラテジートラック工場はピックアップトラック「Fシリーズ」スーパーデューティや、「エクスペディション」、リンカーン「ナビゲーター」など大型車両を生産する同社最大規模の生産拠点。ウェルズ・ファーゴのアナリストは、今回のストライキによる同工場の利益損失は、毎週約1億5,000万ドルに上ると試算する(ロイター10月12日)。フォードは声明の中で、「今回の業務停止により、さらに十数のフォード事業と、10万人超の従業員を雇用する多くのサプライヤーでの事業が危険にさらされることになる」と長引くストライキの影響を懸念する。オート・フォーキャスト・ソリューションズの予測担当のサム・フィオラニ氏は「先週から(デトロイト3が)新しい提案をテーブルに持ち込んでいないのであれば、GM(ゼネラルモーターズ)とステランティスは憂慮すべきだ」と述べ、一層のストライキ拡大の可能性を示唆した。
(注)UAWの要求は、新たに雇用された労働者の賃金を低く設定して従業員を二分する給与体系の廃止、賃金をインフレ率と連動させる生計費調整(Cost of Living Adjustment, COLA)の採用、4年間で36%(交渉開始時は40%)の昇給、電気自動車(EV)への移行に伴う雇用の確保など。
(大原典子)
(米国)
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