政府がプラスチックボトルのデポジット制度導入を断念
(フランス)
パリ発
2023年10月04日
フランスのクリストフ・ベシュ・エコロジー移行・地域結束相は9月27日、第17回廃棄物会議で、プラスチックボトルのデポジット制度を導入せず、排出実績をベースとしたプラスチックの廃棄物に係る拠出金の増額・減額システムを導入することを表明した。
デポジット制度を断念した理由として、既に回収目標の80%を達成している地方自治体があることや、デポジット制度を導入している国でプラスチック流通量が減少していないこと、ベルギーがデポジット制度の導入なしに92%のリサイクル率を達成していることなどを挙げた。
EUでは、使い捨てプラスチックボトルのリサイクル率を2025年までに77%、2029年までに90%に引き上げる目標を掲げている。政府は2020年2月施行の循環経済法第66条で、2023年時点でEUの目標を達成することができないと判断した場合には、デポジット制度を導入すると定めていた(特集:欧州が歩む循環型経済への道ギャンブル)。
2022年のフランスの使い捨てプラスチックボトルのリサイクル率は約60%にとどまっており、政府は2023年初頭から産業界、流通業界、NGO、地方自治体などの関係者を集めて、デポジット制度導入に向けて協議を重ねてきたが、地方自治体から大きな反対を受けていた。
フランス市町村長会(AMF)は、回収したプラスチックボトルをリサイクル業者に売却している地方自治体にとって、デポジット制度の導入は3億2,000万ユーロの損失となると主張していた。また、住民の廃棄物に係る税の増額につながるだけで、使い捨てプラスチックの低減にはならず、回収改善のために分別ごみ処理場を近代化した地方自治体にとって不利だとしていた。
9月28日付「ル・モンド」紙ウェブ版によると、今回の政府の決定に対し、廃棄物管理とエネルギーに関する地方自治体の全国組織である地域廃棄物・エネルギー管理のための地方自治体・専門家協会(AMORCE)のニコラ・ガルニエ総代表は「デポジット制度は、飲料業界の多国籍企業が製品の価格を上げ、使い捨てプラスチックボトルを恒久化するだけになっただろう」として、政府の決定を歓迎した。一方で、ミネラルウオーターや清涼飲料水の業界団体のBRF(Boissons Rafraichissantes de France)のエレーヌ・クラド事務局長は「機会を逃した」とリサイクル率の目標達成に懸念を示した。
(奥山直子)
(フランス)
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