総選挙の下院で、保守右派の国民党が躍進

(スイス)

ジュネーブ発

2023年10月27日

スイス連邦議会の総選挙が10月22日に行われ、全州議会(上院、46議席)と国民議会(下院、200議席)の246議席が争われた。投票率は46.6%で、前回2019年の45.1%を1.5ポイント上回った。国民議会には過去最高の5,909人(うち41%が女性)が立候補した。総選挙は4年ごとに行われる。

国民議会の上位6政党が獲得した議席数と得票率は次のとおり(かっこ内は前回2019年との比較)。

  • 国民党(SVP/UDC):62議席(9増)、27.93%
  • 社会民主党(SP/PS):41議席(2増)、18.27%
  • 中央党(Mitte/Centre):29議席(2021年に結成)、14.06%
  • 急進民主党(FDP/PLR):28議席(1減)、14.25%
  • 緑の党(GPS/VERT-E-S):23議席(5減)、9.78%
  • リベラル緑の党(GLP/PVL):10議席(6減)、7.55%

事前の世論調査では保守右派・国民党の勝利と緑の党の敗北が予想され、そのとおりの結果となった。第1党の国民党が9議席を新たに獲得して躍進、国民党が提唱する移民政策や安全保障政策が有権者の共感を呼んだと考えられる。新連邦議会はわずかだが右寄りにシフトした。一方、前回2019年の総選挙で気候変動や環境問題への関心の高まりを受けて躍進した環境系政党は大敗し、緑の党は5議席、リベラル緑の党は6議席を失った。第2党の社会民主党は、医療費や健康保険料の上昇に対する懸念を追い風に2議席増やした。中央党は、前身のキリスト教民主党(CVP/PDC、前回25議席)が人民民主党(BDP/PBD、前回3議席)と合流して2021年に結成され、今回1議席を増やして第3党に浮上した。急進民主党は1議席を失い、第4党となった。

全州議会では、現在31議席が確定しており、これまでのところ中央党と急進自由党がそれぞれ10議席、9議席と最多議席を獲得している。しかし、一部の州では、どの候補者も過半数の得票率を獲得できなかったため、11月に残りの15議席を巡る決選投票が行われる。決選投票では最多票を獲得した候補者が当選する。

新たな議員による連邦議会は12月13日に、2024年~2028年の任期の次期連邦参事会(内閣)の閣僚7人を選出する。現在の連邦参事会は、国民党2人、社会民主党2人、急進民主党2人、中央党1人の閣僚7人で構成されているが、総選挙の結果によってただちに政党の構成が変わる可能性は低いとされている。

(竹原ベナルディス真紀子、パブロ・ダス)

(スイス)

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