タイ商務省、改正ASEANオーストラリア・ニュージーランドFTAを解説
(タイ、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)
バンコク発
2023年10月02日
タイ商務省貿易交渉局(DTN)は9月14日、バンコク市内でASEANオーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)の改正に関するセミナーを開催した。AANZFTAの改正交渉は、2022年11月に実質的に合意していた。2023年8月21日の第28回ASEAN経済相・オーストラリア・ニュージーランド経済緊密化協定(AEM-CER)会合において、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドが第2議定書に署名した。
第2議定書は、オーストラリア、ニュージーランドと、少なくとも4カ国のASEAN加盟国が批准した日の60日後に発効する。タイをはじめ、締約国で署名や批准書の寄託に向けた国内手続き(国会での承認手続きを含む)を進める。発効は2024年中となる見通し。
改正AANZFTAでは、政府調達、零細・中小企業(MSMEs)、貿易および持続可能な開発に関する3つの章を新たに導入する。また、既存の各章を改正するほか、サービス貿易章に新たな付属書を追加する。
改正にかかるポイントは次のとおり。
- 物品貿易:非関税措置(NTMs)に対処する新規定を導入。特に緊急時における必需品の流通に、不必要な貿易上の障害をもたらすNTMsを採用、適用しないことを約束。
- 原産地規則:全ての締約国で発生した原材料や生産コストの付加価値を加算できる「完全累積」規定を導入する。原産地証明書の自己証明制度を追加する。
- 税関手続きおよび貿易円滑化:通関手続きを迅速化するためのシングルウィンドーを採用する。人道的危機、伝染病、パンデミック時の必需品の円滑化を盛り込む。法令順守を確保するため、透明性のある方法で通関後の監査を実施することを約束。
- サービス貿易:「専門サービス(Professional Services)」「教育サービス協力(Education Services Co-operation)」の2つの付属書を追加する。
- 自然人の移動:締約国間のビジネス目的での個人移動の円滑化や、企業内転勤者やビジネス目的での訪問者に対するコミットメントが拡大される。輸出した設備の導入・サービスなどで専門家やエンジニアのサービス提供がしやすくなる。
- 電子商取引:事業環境の改善や電子インボイスの採用促進を盛り込む。電子貿易関連文書の受理などペーパーレス取引の推進や、デジタル貿易をサポートする国際規準の採用を含める。
- 投資:最恵国待遇規定を導入する(締約国がタイ以外に提供しているコンセッションは、タイにも提供される)。締約国が上級管理職や取締役会メンバーに国籍・居住要件を課すことを禁止する。ローカルコンテント要件(原材料・部品などの現地調達を求めること)や国内物品の使用、一定割合の物品輸出要求など、投資の条件として特定の要件を求めること(パフォーマンス要求)を禁止する。
- MSMEs:本協定の利用を促進し、MSMEが恩恵を享受できるようにする。
- 政府調達:締約国間での政府調達の透明性、公平性、開放性を高め、電子的手段の利用の促進などを盛り込む。環境・サステナビリティへの配慮を義務付ける。
(北見創、シリンポーン・パックピンペット)
(タイ、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)
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