EUからの援助金受け入れをチュニジアが拒否

(チュニジア、EU)

パリ発

2023年10月12日

チュニジアのカイス・サイード大統領は10月2日、EUからの約1億2,700万ユーロに相当する資金受け入れを拒否すると表明した。チュニジアと欧州委員会は7月16日、「EUとチュニジア間の戦略的かつ包括的なパートナーシップに関する覚書」(関連ブラック ジャック ブラック)を締結している。

欧州委員会は9月22日、同覚書の履行のため、チュニジアに対する6,000万ユーロの資金提供と、約6,700万ユーロに相当する移民対策執行支援プログラムを数日以内に実行すると発表していた。サイード大統領は資金受け入れを拒否する理由として、同覚書との矛盾を理由に挙げた。しかし、「少額」が問題ではなく、敬意に欠けていることに問題があるとし、EUとの協力は受け入れるが、慈善活動や施しに似たものは一切受け入れないと述べた。また、チュニジアが不法移民の地中海密航斡旋に関与した犯罪ネットワークを解体するために独自にあらゆる努力を行っていることを強調した。

同覚書の履行と優先事項について協議するため、欧州委員会当局者の代表団がチュニジアを訪問する予定だったが、サイード大統領は9月25日、国家安全保障会議の中で、外務・移民・在外チュニジア人相に対し、訪問延期の決定を欧州側に知らせるよう指示していた。

サイード大統領が資金受け取り拒否によりEUとの対立姿勢を示す一方で、不法移民を巡る状況は緊迫している。イタリア内務省の発表によると、2023年のイタリア国内の不法移民数は9月14日時点で既に12万人を超えており、前年の同時期と比較すると2倍に増えている。中でも北アフリカと欧州間に位置する人口約6,000人のイタリア・ランペドゥーザ島は、到着する不法移民数が島民数を超える深刻な状況にあり、欧州委員会は9月18日、ランペドゥーザ島対策10項目を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。チュニジア経由でランペドゥーザ島に向かう移民ルートの密航斡旋業者に的を絞り、チュニジア、欧州国境沿岸警備機関(フロンテックス)、欧州刑事警察機構(ユーロポール)内のタスクフォースが連携して、チュニジアからの出国防止を支援することなどを挙げている。

9月28日には、「難民や移民の人権保護」をテーマにした国連安全保障理事会で、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)ニューヨークのルーベン・メニクディウェラ事務所長が、2023年初から9月24日までに地中海横断を試みた移民のうち、死亡・行方不明者数は前年同期比で約50%増の2,500人以上となり、同期間に南ヨーロッパ(イタリア、ギリシャ、スペイン、キプロス、マルタ)に到着した移民は18万6,000人と、前年同期比83%増を記録したと述べた。出発国に関しては、2023年1月から8月までにチュニジアから10万2,000人以上、リビアから4万5,000人以上が地中海横断を試みたとした。

(渡辺智子)

(チュニジア、EU)

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