ルーラ大統領、途上国への投資拡大に向けたBRICSの役割を評価、事前予想に反して加盟国拡大を擁護

(ブラジル、南アフリカ共和国、中国、インド、ロシア、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)

サンパウロ発

2023年09月04日

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は824日、南アフリカ共和国ヨハネスブルクでの記者会見で第15BRICS首脳会議を振り返り、「地政学的な観点で経済や科学、技術などについて考える場合、BRICSに言及せずに議論を展開することはほぼ不可能となった。米国やG7だけでは話が進まない」と、BRICSが持つ世界的な存在感を訴えた。ルーラ大統領は822日の演説では、途上国における伝統的な金融機関では実質的な改革が欠如しており、既存銀行の取引量と信用方式に制約があるため、途上国の莫大(ばくだい)な投資資金需要を満たしていないとの見解を示した。その上で、ルーラ大統領は、発展途上国への投資を拡大するためにはBRICSの新開発銀行(NDB)による資金供与が重要性であることを強調している。

BRICSに新たに6カ国(注)が加盟するとの発表(2023年8月25日記事参照)について、ブラジル外務省は拡大に慎重な姿勢を示していると報じられていた。しかし、ルーラ大統領は824日の記者会見で、「新加盟国を含めるとBRICSGDPは(世界の)36.64%、ほぼ37%になる。これらの国の地政学的な重要性は否定できない」と、新規加盟によるBRICSへの影響を評価した。特に、隣国アルゼンチンの加盟についてルーラ大統領は、野党大統領候補がBRICS加盟に否定的なことを踏まえ、誰が大統領になろうがBRICSからすればイデオロギーは無関係とした上で、「アルゼンチンが加盟を選択したことは今回、地政学的に重要なものとなり、ブラジルにとっても非常に重要」との見方を示した。さらにルーラ大統領は、今後加盟国がさらに増えることの必要性を説き、アンゴラ、モザンビーク、コンゴ共和国、ナイジェリアなどを加盟可能な候補として挙げた。

一方、現地メディアの一部では、BRICS拡大によってブラジルの影響力が弱まることを懸念する声もある。例えば、825日付現地紙「バロール」の社説では、加盟国の拡大によって「ブラジルは脇役を演じることとなる」と報じられている。

(注)BRICSへの新規加盟が発表されたのは、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、南アフリカ共和国、中国、インド、ロシア、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)

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