大統領選、現職のエマーソン・ムナンガグワ氏が再選
(ジンバブエ)
ヨハネスブルク発
2023年09月06日
ジンバブエで8月23日、大統領選挙を含む総選挙が行われた。ジンバブエ選挙管理委員会(Zimbabwe Electoral Commission:ZEC)は26日、与党のジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(The Zimbabwe African National Union – Patriotic Front: ZANU-PF)を率いるエマーソン・ムナンガグワ現大統領の2期目の当選を発表した。野党からは、不正選挙のためのやり直しを求める声があがっているものの、ZECの発表を受け、ムナンガグワ氏は9月4日、大統領就任式に臨んだ。就任式には、シリル・ラマポーザ南アフリカ共和国大統領のほか、ジンバブエと関係の深い中国の韓正国家副主席、ベラルーシのペトル・パークホムチク副大統領らが出席した。
今回の大統領選には11人が立候補した。ムナンガグワ現大統領の得票率は52.6%で、対立候補として注目されていた、変革のための市民連合(Citizens Coalition for Change: CCC)のネルソン・チャミサ党首が得票率44%を獲得、その他候補者は2%以下の得票率に終わった。ZECによると、投票率は68.9%だった。
国会議員選挙に関しては、ZANU-PFは210議席のうち136議席を獲得したが、求めていた3分の2の議席獲得には及ばなかった。CCCは73議席を獲得した。
今回の選挙では、首都ハラレを含めた一部都市で投票用紙の不足による混乱が見られ、投票は8月24日まで延長された。メディアの報道によれば、CCCは、今回の選挙で不正と有権者弾圧が行われたと批判しており、選挙監視団の管理の下で再度選挙を行うべきだと訴えている。
このほか、今回の選挙を監視していた南部アフリカ開発共同体(SADC)による選挙監視団は「今回、比較的に平和裏に選挙が実施されたが、一部ではジンバブエの憲法や民主的選挙を管理するSADCガイドラインの要件を満たしていなかった」と報告した。国連やアフリカ連合(AU)などの選挙監視団も、有権者登録名簿の管理問題、国営メディアの偏向報道、有権者への脅迫などに対して懸念を示した。
ZANU-PF党は1980年以来、長らく政権を担っており、ムナンガグワ大統領はロバート・ムガベ氏が辞任した2017年に新しく大統領に就任した。長引くインフレ、高い失業率や経済の低迷に悩まされており、IMFは2023年の同国の成長率を2.5%、インフレ率は172.2%に高止まりすると予想した。ジンバブエ政府資料によれば、15歳から34歳までの失業率は2023年第1四半期で26.1%だった。ムナンガグワ政権による、国際社会での信頼回復や経済の立て直しに期待が寄せられるが、今回の選挙結果の正当性も含め、地域や国際社会からの視線は厳しい。
(堀内千浪)
(ジンバブエ)
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