メキシコ市国際空港の飽和状態を再確認、1時間の発着数を43便に制限

(メキシコ)

メキシコ発

2023年09月04日

メキシコのインフラ通信運輸省(SICT)は8月31日、連邦民間航空庁(AFAC)の決議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを連邦官報で公示し、メキシコ市国際空港(AICM)の飽和状況(注)を再確認した。SICTは航空安全を確保するため、2023年冬季(10月29日~)から当面の間、同空港の1時間当たりの発着数を43便に制限する対策の導入をAICMに命じた。SICTは決議で、2022年3月3日付官報で公示した飽和宣言以降もAICMの飽和は解消に向かわず、AICMの年間利用客数は直近1年間で4,620万人から5,200万人に増えたことを挙げ、さらなる対策が必要と結論付けている。

この措置に対し、国内航空業界からは強い反発の声が上がっている。全国航空輸送会議所(CANAERO)は8月31日付のSNS公式アカウントで声明文を出し、当局の一方的で恣意(しい)的な科学的根拠を欠く決定により、メキシコ市から国内外へのアクセスが悪化し、旅行者、航空関係者、投資家に甚大な悪影響を与えると警告している。CANAEROによると、AICMは1時間当たり61便の発着能力を有するが、2022年に航空業界が自主的に52便まで発着を制限した。今回の突然の減便命令は、既に航空券を購入した多くの旅行者に損害を与え、メキシコ市の中南米における航空ハブとしての優位性にも悪影響を与えるとしている。また、AICMの飽和は、空港当局がインフラ拡張に向けた適切な投資を行っていないからだと批判している。

他方、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は8月31日の記者会見で、AICMは能力の150%の水準で運営しているとし、今回の措置の必要性を主張した。また、航空会社はAICMでの就航を減らし、フェリペ・アンヘレス国際空港(AIFA)の利用を増やすという約束を守らないばかりか、AICMの発着をさらに増やしていると批判した(大統領府記者会見録8月31日付)。

IATAも反対

今回の措置は、AICMの飽和解消という目的以外に、2022年3月に開港したものの、利用客数が当初の想定を大幅に下回って停滞している大統領の肝いりインフラプロジェクトのAIFA利用を促す狙いがあるとみられている。アエロメヒコなど国内航空会社に加え、パイロット協会からも反対の声が出ている。さらに、国際機関も批判している。国際航空運送協会(IATA)は9月1日、今回の措置は観光客や、航空輸送事業、コネクティビティー、観光、競争力に悪影響を与えるだけでなく、メキシコの航空分野の国際約束にも反する内容だとし、措置の撤回を要求した。特に、利用者や事業者との対話のプロセスを十分に経ずに当局が一方的に決定したことに遺憾の意を表し、AICMは発着の収容力が問題ではなく、施設の老朽化が問題だと主張、航空業界は政府や関係者との対話の上でAICMの問題解決を志向する意思があるとしている(IATAプレスリリース9月1日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(注)ターミナル1は午前5時~午後10時59分、ターミナル2は午前6時~午前10時59分、午後1時~午後7時59分、午後9時~午後9時59分の時間帯は、両ターミナルの許容量を超える旅客が利用しているとしている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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