米連邦取引委員会、反トラスト法違反の疑いでアマゾンを提訴
(米国)
ニューヨーク発
2023年09月28日
米国連邦取引委員会(FTC)と17州の司法長官は9月26日、米国アマゾンがオンライン市場での排他的な行為によって独占力を維持し、反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)に違反しているとの疑いで、同社をワシントン州西部地区連邦地方裁判所に提訴した。
FTCなどは、アマゾンが行う以下のような点が独占的な地位を利用して競争企業の成長や参入を妨げる排他的行為に当たり、毎年数千億ドルの小売売上高に影響を与え、大小さまざまな企業が販売する数十万の製品や、1億人以上の買い物客に影響を与えているなどと主張した。
アマゾンによる具体的な排他的行為には、次の2点を挙げた。
- アマゾンのEC(電子商取引)サイトで販売する出品者が他のECサイトより低価格で販売しているのを発見した場合、その出品者をアマゾン上の検索結果の下位に表示して、実質的に消費者から見えなくするなどの罰を与え、オンライン全体での商品価格を高止まりさせている点。
- 出品者がアマゾンでビジネスを行うために事実上必要となる「プライム」マークを取得するために、同社の高額なフルフィルメントサービス(注)の利用を条件付け、出品者の他のECサイトでの商品提供コストを大幅に上げ、競争を阻害している点。
そのほか、アマゾンでの販売に頼らざるを得ない多くの出品者に、月額料金や広告料金などとして、出品者の総収益の50%にも上る高額な手数料を支払わせるなど、独占的地位を利用して莫大(ばくだい)な利益を得ていると指摘した。
こうした状況を是正するべく、FTCなどはアマゾンの違法行為を禁止し、同社の独占的支配を弱めて公正な競争を回復するための恒久的な差し止め命令を連邦裁判所に求めている。
FTCなどの提訴に対し、アマゾンのグローバル公共政策担当シニアバイスプレジデントのデビッド・ザポロスキー氏は翌27日の声明で「FTCの思いどおりになれば(顧客が)選択できる製品が減り、価格は上昇し、消費者への配送が遅くなり、中小企業の選択肢が減ることになる。これは独占禁止法が意図していることとは正反対だ」とコメントし、この提訟は「事実と法律において間違っている」と反論している。
米国では近年、大手テック企業による市場支配力の高まりに対する監視が強まっており、反トラスト法違反の疑いで規制当局による訴訟が相次いでいる。FTCは2023年6月、マイクロソフトによるゲームソフトウエア開発会社アクティビジョン・ブリザードの買収を阻止するため、連邦裁判所に差し止めを求めた(「ワシントン・ポスト」紙電子版6月12日)。また、司法省は2023年1月、グーグルがデジタル広告の売買を手掛ける主要な技術を独占しているとして、同社を反トラスト法違反で訴訟を起こしており(関連ブラック ジャック サイト)、今後の行方に注目が集まっている。
(注)アマゾンが自社の物流拠点に納品された商品について、その注文の受注や梱包(こんぽう)、発送、カスタマーサービス、返品対応を代行するサービス。
(樫葉さくら)
(米国)
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