新産業マスタープラン2030、製造業の高度化や雇用創出を推進
(マレーシア)
クアラルンプール発
2023年09月07日
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、投資貿易産業省(MITI)で9月1日、「新産業マスタープラン(NIMP)2030」を発表した(MITIプレスリリース、NIMP2030全文)。アフマド・ザヒド・ハミディ副首相やテンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相をはじめ複数の閣僚が、同国として1986年以降4つ目となる産業政策の発表に立ち会った。
NIMPは、マダニ経済政策(2023年8月2日記事参照)の重要な実現手段の1つとして、産業構造の変革に向けたミッションや優先事項を網羅し、産業部門の将来を方向付ける包括的な枠組みだ。広範な成長を実現するための6つの目標として、「経済複雑性の向上」「高付加価値の雇用機会創出」「国内産業間の連携拡大」「新たな産業集積の開発と既存集積の改善」「包摂性の向上」「ESG(環境・社会・ガバナンス)の推進」を明記した。また、具体的な数値目標として、2030年までに製造業の付加価値を2022年比で年率6.5%増の5,875億リンギ(約18兆2,000億円、1リンギ=約31円)へ、雇用創出を同2.3%増の330万人へ、給与の中央値を2021年の月額1,976リンギから年率9.6%増の4,510リンギまで引き上げる、こととした。
発表に際し、ザフルル大臣は「製造業は国の経済拡大を推進する重要な成長エンジンだ」「特に国の屋台骨である中小企業の競争力を強化し、グローバルなサプライチェーンに統合することが重要」と強調した。同相は、80回以上の対話を通じ、1,000人以上の関係者から意見を聴取しNIMP2030を策定したと述べた。
ミッションベースのアプローチを初めて採用
従来の産業政策が、分野や産業ベースのアプローチを採用したのに対し、NIMP2030ではミッションベースのアプローチを初めて導入した。4つの具体的なミッションとして、(1)経済の複雑性推進、(2)国家のデジタル化に向けた技術力向上、(3)脱炭素の推進、(4)経済安全保障と包摂性を確保、が打ち出された。また、これを達成するための要素(エネーブラー)として、(A)資金調達エコシステムの活性化、(B)人材の育成・獲得の強化、(C)ビジネス環境改善に向けた投資過程の改善、(D)国家のガバナンス強化、を掲げた。
目標達成に向けて、2030年までに推定950億リンギの投資が必要と推計され、その多くは民間から調達する。政府は82億リンギを充当するほか、同プランにかかる優遇措置の詳細を、2023年10月に発表する2024年度予算案で提示する。マレーシア産業開発金融(MIDF)系シンクタンクのMIDFリサーチは「実現できれば、製造業のみならず全産業にプラスの波及効果をもたらす」として、NIMP2030を高く評価している。
(吾郷伊都子、エスター頼敏寧)
(マレーシア)
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