国会が選挙管理委員会の新役員発表、次期大統領選に向けた現政権の影響力強化との見方も
(ベネズエラ)
ボゴタ発
2023年09月01日
ベネズエラ国会は8月24日、国家選挙管理委員会(CNE)の役員5人全員の辞任に伴う新たな役員を公表した。CNE人事刷新は2024年予定される大統領選挙に向けた政権側による下準備の一環との見方がでている。新役員会は引き続き政府支持派が多数を占めるほか、ニコラス・マドゥロ政権の強硬派のエルビス・アモロソ氏が会長職を務めることから、反政府派はCNEに対する政権側の影響力を強化するためのてこ入れと捉えて反発している。
CNEでは2023年6月、理由は不明ながら、政府支持派の役員3人が辞任。その後、反政府派の2人も「透明なプロセスで新体制の役員が任命されるようにするため」として辞任を決めた。新役員会はこれまでと変わらず政府支持派3人、反政府派2人で構成し、会長のエルビス・アモロソ氏は会計検査院長として反政府派予備選での有力候補者の資格を次々に剝奪した。新役員は公募によって選出され、政権側主導で発足した経緯のある国会(2020年1月9日記事参照)で任命された。
現在、反政府派の各党は2024年の大統領選で統一候補を擁立するための予備選を10月22日に実施する(2023年3月20日記事参照)。反政府派による予備選挙委員会(CNP)はベネズエラ全土での円滑な投票のために投票所や集計システムなど、予備選の実施に当たってCNEの協力を得ることを検討していたが、CNEに対する反政府派内の根強い不信感から、現状では協力がないまま実施する見通しだ。
ニコラス・マドゥロ大統領は8月23日の会見で、CNE役員の人選は「立法府によって指名された」と強調した。しかし、反政府派は、政権の強さを見せつけることで国民の予備選の投票意欲をそぐ策略だと捉えている。予備選有力候補の1人のエンリケ・カプリレス氏(元ミランダ州知事/正義第一党)は8月25日のインタビューで「(CNE役員の人選は)予備選を脅かし、反政府派を追い出す現政権の戦略だ」と反発した。巧妙に手を打つマドゥロ政権の下で、反政府派は予備選を実施し、有効な候補者を立てることができるのかが注目される。
(マガリ・ヨネクラ、豊田哲也)
(ベネズエラ)
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