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(マレーシア、日本)
クアラルンプール発
2023年08月28日
日本政府が8月24日から東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水を海洋へ放出したことを受け、マレーシア保健省はこれに先立つ8月23日、「福島第1原発の放射性処理済み水の放出について」と題する声明を発表し、日本から輸入される高リスク食品に対し、レベル4(監視)検査を課す意向を表明した(注)。取材に対応したムハマド・ラッジ・ビン・アブ・ハッサン医務技監は「放射性物質の含有量を分析するための検査は、マレーシアへの入境時点で行われる」と述べた。
声明では、ALPS処理水の放出が、日本の安全基準に沿って段階的に行われ、7月4日に国際原子力機関(IAEA)の承認を得た行為であることや、本件につきアジア太平洋地域の複数の国がさまざまな反応を示しているとの事実を記載。マレーシアでは、放射性核種による汚染は、1985年食品規則に基づき管理されていること、また、コーデックス国際規格が、食品および飼料中の汚染物質および毒素に関するガイドラインとして、CXS193-1995を規定していることにも言及した。
在マレーシア日本大使館が8月24日に保健省に確認したところ、「今回発表した措置はあくまで一時的な予防措置。無作為にサンプルを抽出して検査する予定だが、具体的なサンプル数は定まっていない」とのことだったという。検査対象である高リスク食品が何であるか、声明には明示されていないが、保健省は冷凍・冷蔵魚・海塩、生海苔(のり)などを例示した。検査費用は保健省が負担し、輸入業者に追加的な費用や証明書などの提出は求められないという。
2011年に発生した東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故の際、マレーシア保健省の食品安全品質課は、2011年5月から2012年4月にかけて、日本から輸入される食品のモニタリングを実施していた。その後2019年にも特別モニタリングを実施し、計102のサンプルを分析。結果的には、全てのサンプルで、放射性物質の含有量は定められた基準値以内だったことが確認された。
食品の安全性確保に留意、冷静な対応呼びかけも
保健省によれば、2022年から2023年6月までの期間中、日本からの食品輸入で最も金額として大きいのは魚介類・魚介加工品で、次いで果物・野菜、加工食品・飲料と続く。保健省は、本件に関する消費者の懸念を認識しており、輸入時やマレーシア国内市場の流通において食品の安全性が確保されていることを引き続き確認するとしている。
8月23日付の現地紙スターによれば、農業・食糧安全保障省はALPS処理水放出について、マレーシア国民に対し、冷静さを保つよう呼びかけている。同省のチャン・フンヒン副大臣は「(同省)水産局によれば、日本からは現状、活魚を輸入していない」「活魚以外については、保健省、検疫検査局(MAQIS)、漁業開発庁(LKIM)などの関係当局とも密に連携し、輸入後の衛生証明書や放射線量の計測も含め、食品の安全性を監視している」と述べた。
(注)保健省食品安全品質課によると、食品安全基準の警戒レベルには6段階のレベルがある。レベル1:自動通関、レベル2:書類検査、レベル3:モニタリング検査、レベル4:監視検査、レベル5:保留・検査・リリース、レベル6:自動拒否。
(吾郷伊都子、エスター頼敏寧)
(マレーシア、日本)
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