国内生産車の需要喚起策の議論が活発化
(ロシア)
調査部欧州課
2023年08月31日
西側諸国の全ての乗用車メーカーがロシアから撤退や現地工場の停止を決め、自動車産業が厳しい状況に立たされる中、ロシア国内で生産される乗用車への需要を喚起し、業界全体をサポートしていこうとする動きや発言が相次いでいる。
下院のウラジスラフ・ダワンコフ副議長は8月21日、「国産新車を対象に、有料駐車場の利用を3年間無料にすべき」という提案をミハイル・ミシュスチン首相に提出した。ダワンコフ氏は、車両の価格が高騰する中で「人々には今のところ国産車を選択する動機づけがない」と指摘している。
国会議員や官僚が運転する車両や政府機関の公用車を国産車に限定しようという議論も進む。こうしたアイディアは既に1990年代からたびたび登場しているが、8月上旬にウラジーミル・プーチン大統領が企業家との懇談の場で「全ての役人は国産車に乗るべきだ」と支持を表明したこともあり、再び議論が活発化している。
タクシーの「国産化」、業界は反発
国内生産車の需要喚起策として特に注目されるのが、タクシーを国産車に限定しようとする動きだ。政府はプーチン大統領の指示を受け、旅客運送営業用の車両に国産品の使用を義務付ける場合の具体的な部品現地化(ローカライゼーション)の要件を検討している。
上院経済政策委員会のアンドレイ・クテポフ委員長はタクシー車両にローカライゼーションを求めることに関して、3年ごとに更新するのが良いとされるタクシー車両は買い替え需要が安定していることから、市場の活性化の効果が高い点と、メーカー側に高い現地調達率が求められることによって産業にさらなる投資の流入が期待できる点を指摘している(タス通信1月12日)。
一方で、タクシー業界は明確に反対の立場だ。全国タクシー協会は7月、ミシュスチン首相に書簡を送り、タクシー業界に対して国内生産車の購入を強要しないよう要請した。同協会は、需要と供給の不均衡から国産エコノミークラス車の価格が既に大幅に値上がりしているとした上で、今回の措置が「国内でタクシー料金の上昇などの悪影響を引き起こす」と懸念を表明している(ベドモスチ紙8月21日)。
【欧州課】
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