米モデルナ、オミクロン株派生型に対応の改良ワクチンに関する臨床結果を発表
(米国)
ニューヨーク発
2023年08月24日
米国のモデルナは8月17日、予備的臨床試験のデータから、同社が開発中の改良ワクチンによって、新型コロナウイルスのオミクロン株派生型「EG.5(エリス)」と「FL.1.5.1(フォルナックス)」に対する中和抗体が優位に増加することを確認したと発表した。発表では、今回の試験結果がこれらの変異体に対する改良ワクチンの有効性を示唆するものだとしている。
世界保健機関(WHO)は8月9日、「EG.5」を注目すべき変異株に指定した。また、米国疾病予防管理センター(CDC)の統計によると、8月6~19日の14日間での新規感染者のうち、「EG.5」感染者が最多の20.6%で、「FL.1.5.1」が次いで多い13.3%となっている。
改良ワクチンの開発は、米国食品医薬品局(FDA)のワクチンおよび関連生物学的製剤諮問委員会(VRBPAC)が、2023~2024年の秋冬に向けてオミクロン株派生型「XBB.1.5」に対応するワクチン開発を推奨したことを受けた動きだ(注1)。モデルナは6月のVRBPACで、同社の改良ワクチンが主要な「XBB」系統に対して免疫応答を示す臨床試験データを発表していたが、今回のデータにより、同ワクチンがエリスやフォルナックスのような、現在、感染の拡大が懸念されている株にも抗体反応を示すことも確認できたとしている(注2)。改良ワクチンは、FDAなど関係当局からの承認が下り次第、今秋からの使用が可能となるとしている。
VRBPACによる推奨を受け、米国製薬大手のファイザーとドイツのバイオ医薬ベンチャーのビオンテックも、「XBB.1.5」に対応するワクチンの開発を進めてきた。両社は6月23日、生後6カ月以上の人に対する両社開発の改良ワクチンの使用許可をFDAに申請したと発表していた。また、両社がこれまでに開発したオミクロン株派生型「BA.4」「BA.5」に対応する2価ワクチンは、ある程度「XBB」系統に対応できるとしつつも、それらに特化した改良ワクチンを接種した方が発症や重症化に対する防御を改善できると示唆する研究結果が出ているとしていた。
(注1)新規感染者に占める「XBB.1.5」感染者の割合は、7月9~22日時点で最多を占めていたが、8月6~19日時点では4.7%まで減少している。
(注2)なお、エリスおよびフォルナックスは、いずれも「XBB」系統だ。
(吉田奈津絵)
(米国)
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