アフリカ豚熱(ASF)ワクチンの商業使用、ベトナムが世界初の承認
(ベトナム)
ホーチミン発
2023年08月10日
ベトナム農業農村開発省は7月24日、公文書4870/BNN-TYで、アフリカ豚熱(ASF、注)ワクチンの使用に関するガイドラインを出した。今般の文書により、同ワクチンはASFに対する世界初の商用ワクチンとして、ベトナム国内での使用が承認されたことになる。
商業使用が許可されたワクチンは、同省傘下のNAVETCOが開発したNAVET-ASFVACと、畜産業向けワクチンの研究・製造を行うAVACベトナムが開発したAVAC ASF LIVEの2種類だ。
商業使用の承認に先立ち、2023年4~5月に実施された、米国農務省の専門家による第三者評価では、これらのワクチンは国際的な品質基準に準拠していると評価された。また、2023年7月時点で、65万回以上の試験投与がベトナム全土の農場で実施されている。
ワクチンを投与された豚は、投与後2~4日後に軽度の発熱、食欲低下、咳、下痢などの症状が現れるが、深刻な健康被害などは確認されておらず、2回のワクチン注射を受けた豚の95%以上に高い抗体反応が確認された。
同公文書によれば、農業農村開発省はASFワクチン製造元である2社に対して、同ワクチンの国内販売と輸出に向けた生産計画を策定するよう要請した。また、製造会社は、使用前における全てのバッチ番号(製造ロット番号)の品質検査を行う責任を持つとともに、ワクチンの品質を検査するため、少なくとも10回に1回以上は同省獣医局傘下の獣医薬管理センターにサンプルの送付を実施するよう定めている。
ASFは長年にわたって世界の豚肉市場に甚大な影響を与えており、その被害額は2,500億ドルに上る。2018~2019年に発生した大流行では、世界最大の豚の生産国である中国で豚の飼育頭数が約半減し、推定1,000億ドル以上の損失が生じた(ロイター2023年7月24日)。
日本の農林水産省によると、ベトナムでは2019年2月1日に初めてASFの発生が確認されてから2023年6月23日までに、約2,355万3,400頭の飼養豚が感染している。2020年5月には、ASFの影響によってベトナム国内の豚肉の供給が減少し、物価対策として、生きている豚の輸入を解禁するといった措置を講じてきた(2020年6月26日付地域・分析レポート参照)。
現地報道によると、多くの国が同ワクチンの購入に関心を示しており、フィリピンが30万回分の輸入を要請したという(VNエコノミー2023年7月24日)。
(注)アフリカ豚熱(ASF)は、ASFウイルスが豚やイノシシに感染することによる発熱や全身の出血性病変を特徴とする致死率の高い伝染病。ASFの発生は2023年7月時点、日本では確認されておらず、ハイパーブラックジャックにおけるこれまでの発生状況が農林水産省のホームページに掲載されている。
(児玉良平)
(ベトナム)
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