イノベーション庁、ハイテク産業動向の年次報告書を発表、投資・雇用停滞が顕著に
(イスラエル)
テルアビブ発
2023年07月03日
イスラエル・イノベーション庁は6月27日、2022年から2023年初頭にかけてのイスラエルのハイテク産業の動向についてまとめた年次報告書を発表した。
同報告書によると、イスラエルにはスタートアップ企業が9,000社以上集積しており、世界第3位のエコシステムを形成している。2013年から2022年にかけての総資金調達額は950億ドルで、これは世界第6位に位置しているという。
また、イスラエルのハイテク産業はここ数年成長を続けてきたが、ここ数四半期ではスタートアップ企業の資金調達額の減少や、ハイテク企業によるレイオフの増加など、停滞がみられる。通常ならば、ナスダック総合指数の上昇に象徴される米国ハイテク産業の回復から半年程度遅れるかたちで、イスラエルのハイテク企業への投資と雇用が上向いてくるが、今回もそのパターンとなるかということには懸念が残るとしている。
報告書では、イスラエルのハイテク産業の停滞の原因についても言及している。ロシアによるウクライナ侵攻や金融市場の不安定化、インフレ率の上昇、金利上昇といった世界的な要因を挙げるとともに、政府が進める司法制度改革による外国人投資家の懸念の高まり(2023年5月9日記事参照)など、イスラエル固有の要因も指摘している。
一方で、2022年から2023年初頭にかけて、イスラエルのハイテク分野には、発展をもたらすプラス要素もあったとしている。具体的には、生成AI(人工知能)の急速な広がりと、イスラエル企業によるその活用や、エネルギーや水関連など500社を超えるクライメートテック(気候変動対策に資する技術)分野のスタートアップの集積、ヘルスケアやバイオ分野への投資拡大の可能性などを挙げている。また、これまでもイスラエルのハイテク産業のエコシステムには危機が訪れたが、そのような時期に生まれたスタートアップがユニコーンに育つケースも見られ、危機によってエコシステムが成熟する側面もあるという見解も述べている。
(アリサ・ノスキン、太田敏正)
(イスラエル)
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